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日本磁気学会 第56回ナノマグネティックス専門研究会報告
日時:2013年11月29日(金) 13:30〜16:45
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:21名

 今回のナノマグネティックス研究会では、ホイスラー合金Co2FeAlを用いたMTJ開発とその優れた垂直磁気異方性、及び、電界によるスピンダイナミクス制御に関する研究成果のエッセンスをわかりやすくご講演頂いた。また、磁気ヘッド関連技術として、サイドシールド構造のread素子および表面プラズモンを活用した熱アシスト磁気記録について、最先端の研究者を招いて講演頂いた。本研究会では発表の途中でも質疑可能なスタイルをとっており、活発な議論を行うことができた。
  1. 「ホイスラー合金を用いた強磁性トンネル接合と界面誘起垂直磁気異方性」
    ○介川裕章、Z. C. Wen、猪俣浩一郎、三谷誠司 (物材機構)
     ホイスラー合金Co2FeAl薄膜を用いて作製した強磁性トンネル接合とMgO界面に誘起する垂直磁気異方性についての報告がなされた。Co2FeAlとMgOバリアを組み合わせることで巨大TMR比が実現され、さらに、スピン注入磁化反転書込みも可能であることが示された。また、Co2FeAlを1 nm程度の超薄膜とすることでMgOバリア界面に強い膜面直方向への磁気異方性が現れ、垂直磁化型TMR素子を実現したことが報告された。

  2. 「超薄膜強磁性金属における電界スピンダイナミクス制御」
    〇野崎隆行 (産総研)
     超薄膜強磁性金属における電圧磁気異方性制御に関する最近の進展について報告がなされた。超薄膜FeCo層を有するトンネル磁気抵抗素子における電界強磁性共鳴励起、およびパルス電界誘起ダイナミック磁化反転などの、電界スピンダイナミクス制御に関する実証実験の紹介とともに、電界制御によるスピン制御の低消費電力化への期待について議論がなされた。

  3. 「高TPI記録に対応したサイドシールドつきReaderの検討」
    〇町田貴彦 (TDK)
    新規Reader designであるJS(Junction Shield)型TMRに関する報告がなされた。従来のHM(Hard Magnet)型TMRに対して、大幅なside reading低減効果を確認している。また、この効果はFree層幅が狭くなるに従って顕著になるため、今後のTPI改善に有望な新規Reader designである事が示された。同時に、Bias機能及び外部磁場耐性に関するメリットも報告された。

  4. 「伝搬型及び局在型表面プラズモンを活用した熱アシスト記録磁気ヘッド」
    〇芦澤好人,田村京介,林慶彦,大貫進一郎,中川活二 (日大)
    熱アシスト磁気記録方式における表面プラズモンの高効率活用法が報告された。実証実験手法として、媒体上に直接作製した近接場光アンテナにフェムト秒レーザを照射して、短時間加熱を行う熱アシスト記録の実施例が報告された。さらに、局在表面プラズモンを用いて10 nm程度に近接場光を集光する近接場光アンテナ構造、及び、伝搬光を効率よくプラズモンアンテナへと伝搬するプラズモニック導波路構造が紹介され、19%の光利用効率で媒体10 nm領域に集光可能であることが示された。

文責:宮内大助(TDK)、細見政功(ソニー)