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日本磁気学会 第50回ナノマグネティクス専門研究会
第51回ナノマグネティックス専門研究会報告
日時:2013年3月1日(金) 13:30~16:45
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:27名

 今回のナノマグネティックス研究会では、注目を集めている高性能CPP-GMR膜の特性について2件、計算機シミュレーションを用いた熱アシスト記録の限界検討、および、瓦記録やアシスト記録などの高記録密度化で問題となるイレーズバンド形成など、興味深い4テーマについて最先端の研究者を招いて講演頂いた。本研究会では発表の途中でも質疑可能なスタイルをとっており、活発で面白い議論を行うことができた。講演概要は以下のとおりである。
  1. 「GaOxスペーサを有するCPP-GMR膜」
    土屋芳弘(TDK)
    酸化物半導体GaOxをスペーサに用いたCPP-GMR膜の特性について報告がなされた。以前に報告されたZnOスペーサとは異なり、スペーサ層中のGaOxはアモルファスであったが、スペーサの伝導特性はZnOと同様にオーミック伝導であることが示された。さらに、作製法などの最適化により、RA〜0.2Ωum2において、MR〜25%と高いMR変化率が得られることが報告された。
  2. 「高スピン偏極ホイスラー合金を用いたCPP−GMR」
    Y. Du,中谷友也、S. Li 、○高橋有紀子、古林孝夫、宝野和博(NIMS)
    CPP-GMRの高特性化には、高いバルクと界面のスピン非対称性(それぞれβとγ)が必要である。講演では、高いβを実現するために講演者らが開発した4元ホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子、および高いγを実現するためにスペーサ材料を変えたCPP-GMR素子、さらには、より実用的な観点から行われた多結晶ホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子の開発について報告がなされた。熱処理による特性劣化の原因についてTEMを用いて詳細に解析がなされており、更なる高特性化には層構造の破壊や拡散が起こらないような材料の選択、低温規則化プロセスが必要であることが報告された。

  3. 「熱アシスト記録において、6 Tb/in2以上を達成するためのヘッド及びグラニュラー媒体の検討」
     ○赤城文子、牛山純子、安藤綾乃、宮本治一(日立)
    熱アシスト磁気記録について、記録密度6 Tb/in2 (グラニュラー媒体)、及び8Tb/in2(BPM媒体)を目標に、光/熱及び記録再生特性の解析を行った。グラニュラー媒体を用いた場合、ヒートシンク層の熱伝導率、記録膜の熱伝導率異方性及びMgO膜厚を検討した結果、半値幅14.1 nmの急峻な温度分布が得られ、6Tb/in2 以上の記録が可能であることが確認された。BPM媒体では、ドット間充填層にドットよりも高い熱伝導率材料を用いることで、8Tb/in2以上の記録が可能であることが示された。

  4. 「Erase band noise and generation mechanism due to an adjacent track」
    ○三浦健司1,片田裕之2,小熊実3,西田靖孝2,村岡裕明3(1岩手大,2HGST Japan,3東北大)
    本報告では,高トラック密度化や瓦記録方式では避けることができない隣接トラックからの静磁気相互作用による上書きトラックエッジ位置シフトの発生メカニズム、そのシフトのイレーズバンド幅測定への影響、トラックエッジから発生するノイズ電圧について明らかにされた。この静磁気相互作用はフットプリントの拡縮とエッジ位置シフトをもたらし、結果としてEasy edgeとHard edgeが形成されること、また、そのエッジ間距離は、これまで認識されていなかったイレーズバンド幅成分であることが指摘された.

文責:宮内大助(TDK)、五十嵐万壽和(日立)