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日 時:2012年3月2日(金) 13:30~16:45
場 所:中央大学 駿河台記念館
参加者:26名
今回のナノマグネティックス研究会では、注目を集めている磁性細線メモリの基礎現象解析や磁気抵抗素子を使った磁気センサへの挑戦、資源戦略として期待の高い非金属高磁気異方性発現へのチャレンジや超強力磁石の磁化反転解析など、興味深い4テーマについて最先端の研究者を招いて講演頂いた。本研究会では発表の途中でも質疑可能なスタイルをとっており、活発で面白い議論を行うことができた。講演概要は以下のとおりである。
- 「垂直磁化磁性細線における電流誘起磁壁移動」
小野輝男(京大)
垂直磁化Co/Ni磁性細線における電流誘起磁壁移動についての報告であった。磁壁移動に必要な閾電流密度が磁気異方性由来の内因性ピニングで決定されることが示された。さらに、閾電流密度と磁壁移動速度が外部磁場に対して鈍感でありデバイス応用に適していることが報告された。外部磁場からの圧力に逆らって磁壁を移動させることも可能であり、閾値以下の4×1011 (A/m2)の電流密度で2 (kOe) の磁場に逆らって磁壁を動かすことができることが示された。
- 「磁気抵抗素子を利用した磁気センサの高性能化」
岩田 聡,王 国安,加藤 剛志(名大)
磁気抵抗素子を利用した磁気センサについて新しい検出方法を試みた。最初にスピンバルブ型GMR素子の磁化自由層に形成された磁区に140kHzの交流磁界を加えて磁壁を振動させ,外部磁界による振動中心の変化を検出する方式が示された。この方式では,磁壁抗磁力の影響が低減され,磁壁抗磁力より大幅に低い磁界までリニアな磁界検出が可能となった。次にGMR素子の磁化方位を交流磁界により,振動的に首振り運動させたとき,GMR素子の信号周波数が外部磁界の有無によって変化すること,また,交流磁界と同一周波数成分が外部磁界に比例することが示された。この方式において,フィードバック回路を構成することで,線形性がよく,優れた温度特性が得られることが報告された。
- 「高磁気異方性を有するL10-FeNi薄膜の創製」
小嶋 隆幸、水口 将輝、高梨 弘毅(東北大)
希少元素フリー高磁気異方性材料として期待されるL10-FeNi 合金の薄膜をMBE による交互蒸着で作製した。Au-Cu-Ni バッファ層の組成、FeNi 層の膜厚、成長温度および組成などの条件を振り、磁気異方性の変化を調べた。規則度は0.5 以下であったが、Ku は最大で7.0 × 106 erg/cc に達し、規則度に比例して増大することを確かめた。規則度の向上により、さらに大きな磁気異方性の発現が期待できる。
- 「Nd-Fe-B磁石における磁化反転の模型解析」
三俣千春(東北大)
永久磁石の保磁力は、材料の異方性磁場と比較すると非常に小さく、その矛盾点は未だに明らかにされていない。かつて、クロンミュラーは微細構造パラメータと呼ばれる補正因子を導入してその差異を議論したが、保磁力の低下をもたらす欠陥層の大きさが10nm程度であることが必要であった。今回の発表では、第一原理計算による希土類イオンの表面磁気異方性の計算から、表面第一層のみの磁気異方性異常でも保磁力が低下する可能性があることが示された。
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