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第33回ナノマグネティックス専門研究会 報告
日 時:2010年2月5日(金)13:30〜16:45
場 所:中央大学駿河台記念館
参加者:19名

 今回の研究会では、新しいメモリ・ストレージの要素技術となる高磁気異方性垂直磁化膜、磁壁の電流駆動、ならびに、超高感度なCPP-GMR素子の実現に関して、計4件の講演があった。いずれの講演も今後の研究分野の広がりが期待される分野であり、活発なディスカションが行われた。
  1. 「高磁気異方性を有するL11型CoPt系垂直磁化膜の作製と基礎特性」
    島津武仁(東北大)

     スパッタ法により形成したL11-CoPt規則合金膜の基礎特性と、CoあるいはPtを他の元素で置換した三元系L11型規則合金膜の特性について報告があった。媒体応用の観点から、107 erg/cm3の大きな磁気異方性を維持しながら比較的低い飽和磁化やキュリー温度を実現するためには、Coの一部をNiに置換することが有効であることなどが報告された。

  2. 「強磁性ナノワイヤにおける磁壁電流駆動のマイクロマグネティックシミュレーション」
    小峰啓史(茨城大)

     強磁性ナノワイヤの磁壁電流駆動に及ぼすパルス電流の影響が報告された。磁壁ピン止めがある場合、磁壁の固有振動数とほぼ同等にパルス周波数を選ぶと、磁壁駆動のための閾電流密度が低減できること等が報告された。

  3. 「MR ratio and RA design of CPP-MR film for over 2Tb/in2 read sensors」
    ○高岸雅幸,山田健一郎,岩崎仁志,福家ひろみ,橋本進 (東芝)

     垂直通電型MR(磁気抵抗効果)素子を高記録密度ハードディスクに使用する場合の性能目標の見積もりについての報告があり、例えば1平方インチあたり5テラビットの記録密度の再生ヘッドに使用するためには、スピントルクの抑制・再生素子の構造最適化・熱磁気ノイズの低減が重要であることなどが報告された。

  4. 「ZnOを用いた新規なスペーサを有するCPP-GMR素子特性」
    土屋 芳弘 (TDK)

     酸化物半導体であるZnOをスペーサに用いたCPP-GMR素子の特性について報告がされた。スペーサ層中のZnOはC軸配向したウルツァイト構造を有する結晶質であり、界面材料や作製法を変えることで素子特性が変化することが示された。さらに、ZnOの作製法などを最適化することにより、RA~0.2Ωum2において、MR=21.4%と非常に高いMR変化率が得られることが報告された。

文責:島津武仁(東北大)