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第24回ナノマグネティックス専門研究会 報告
日 時:2008年5月30日(金)13:30 〜 17:00
場 所:中央大学駿河台記念館580号室
参加者:20名
今回の専門研究会では磁気的相互作用をメインテーマとして,交換結合や磁気双極子相互作用などが影響する磁性材料の特性について4件の講演が行われた.議題に上った対象材料の範囲としてもハード材料からソフト材料まで多岐にわたり,様々な分野の研究者間で意見を交わすことができた.参加者からも興味深いテーマが並んでいたと好評を頂き,活発な専門研究会となった.
「SPS法によるNd-Fe-Bナノコンポジットバルク磁石の作製とその磁気特性」
福崎智数、田中啓介、西本一恵、戸谷勤也、西尾圭史、田村隆治 (東京理科大)
硬磁性相と軟磁性相をナノサイズの粒径で混合させたナノコンポジット磁石は両相の交換結合の働きから高い最大エネルギー積が実現できる可能性があり,次世代永久磁石材料として開発への期待が高まっている.今回、放電プラズマ焼結法を用いてNd-Fe-Bナノコンポジットバルク磁石を作製し,焼結条件が組織と磁気特性に与える影響を調べた.その結果,速い昇温速度で瞬間的に焼結すると残留磁化促進効果が高まり,高い最大エネルギー積が得られることがわかった.
「交換結合バイアス膜における反強磁性層臨界膜厚の低減」
三俣千春 (日立金属)
強磁性 / 反強磁性交換結合膜において,バイアス磁場発生の臨界膜厚が反強磁性層の磁壁幅によって規定されていることが示された.反強磁性磁壁幅は材料の磁気構造によって変化し,共線形スピン構造と比較して非共線形スピン構造の方が磁壁幅が減少する.この結果から臨界膜厚を低減するためには非共線形スピン構造が実現される不規則反強磁性合金の方が有利であることが説明された.また,磁壁幅を規定する模型として強磁性体と反強磁性体を含む一般化された式で計算できることが示された.
「島状成長したFe超薄膜の超常磁性」
白土優 (阪大)
Fe超薄膜の島状成長により作製したナノ粒子の超常磁性について,表面構造,結晶配向性との相関を含めて検討した.特に,Feナノ粒子の零磁場冷却(ZFC)後の磁化と,その温度依存性におけるピークについて検討した.
a-Al
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O
3
(0001)基板上に成長させたFeは,粒径5 nm以下のナノ粒子を形成する.Feナノ粒子は,室温で超常磁性状態となる.Feナノ粒子のZFC磁化は,サイズ分散,結晶配向性に依存して,磁化緩和時間あるいは,熱平衡磁化のいずれかに支配される.また,Feナノ粒子の結晶方位が一方向に配向する場合,Feナノ粒子間の磁気的相互作用がブロッキング温度以下の磁気状態に主要な役割を担う.
「Fe / Fe
3
O
4
の反強磁性的層間結合」
柳原英人 (筑波大)
FeとOのみからなる2種類のスピネルフェライト(Fe
3
O
4
およびγ−Fe
2
O
3
)とFeとの間に生じる強い反強磁性的な層間結合に関する講演があった.はじめにMgO(001)単結晶基板上に2つの酸化源(純酸素と純オゾン)を使い分けることで,Fe
3
O
4
とγ−Fe
2
O
3
を作り分けられるという説明があった.つづいて純オゾンを用いて作製したγ−Fe
2
O
3
(001)/MgO(001)/ Fe(001)という試料において,MgOスペーサ層厚が6〜7Å時にJ = -1.3 erg/cm
2
の反強磁性結合が現れること,そしてFe
3
O
4
上にFeを直接成長させた2層膜において-2erg/cm
2
の結合が現れることが示された.結合の原因についてはどちらの場合も界面構造の詳細な理解が必要であるとの説明がなされた.参加者からはスピネルフェライト研究の歴史的な経緯や昨今のスピントロニクス分野での先行研究などが紹介され,双方向での有益な情報交換がなされた.
(中谷亮一(阪大)、三俣千春(日立金属))