日 時:2004年5月27日(木)13:30〜16:20
場 所:英国大使館“New Hall”
参加者:63名
講演内容:
- 「Biomedical Applications of Magnetic Nanoparticles
(磁性ナノ粒子の生物・ 医学的応用)」
Quinten Pankhurst(London Center for Nanotechnology,
UK)
London Center for Nanotechnologyの紹介の後、同センターで行われている研究を中心として、磁性ビーズを用いた、(1)細胞とたんぱく質の標識と分離技術、(2)MRI造影剤、(3)薬剤の磁気輸送、(4)ハイパーサーミア治療の現状と問題点を紹介した。(1)、(2)は実用段階に、(3)、(4)はテスト段階にある。
- 「Biogenic Magnetite Particles in Alzheimer’s Disease
Brain Tissue (アルツハイマー病患者の脳組織中の生体・磁性粒子) 」
Quinten Pankhurst(London Center for Nanotechnology,
UK)
アルツハイマー病の女性患者の脳組織の中には、男性患者および健常者に比べ有意の差で、マグネタイト(Fe3O4)とマグヘマイト(γ-Fe2O3)の中間体のナノ結晶が多く形成されていることがSQUIDを用いた精密測定から示された。生成の機構はまだ解明されていないが、アルツハイマー病の診断、治療、発病機序の解明などに何らかのヒントを与えると期待される。
- 「Application of Bacterial Magnetic Particles to
Assay and Drug Screening (磁性細菌の分析および創薬スクリーニングへの応用) 」
松永 是(農工大)
磁性細菌が合成するナノマグネタイトを生体分子の支持体とする一塩基遺伝子多型(SNP)解析に基づく遺伝子診断や創薬スクリーニング技術を開発した。また、ナノマグネタイト結晶形成に関与するタンパク質を明らかにし、in vitro(生体外)におけるマグネタイト粒子の制御が可能となり、ナノマグネタイトの応用が広がることが予想される。
- 「Nano Magnetic Sensors for Biomedical Screening
(生物・医学的スクリーニング用ナノ磁気センサ)」
Adarsh Sandhu(東工大)
フェライトナノ微粒子を包含したポリマーマイクロビーズは、高感度、高選択性、長期安定性等の優れた特性を有するため、バイオ物質の標識・修飾や検出用に盛んに研究が行われている。そこで、磁性ビーズ検出用にInSb高感度マイクロホール素子センサを開発した。試作した4.5μm角サイズのセンサにより、2.8μm径の磁性ビーズが検出できた。また、同素子を500nm角にアレイ化したことにより、より1桁高感度が得られ、nmサイズの磁性標識が検出できた。
- 次回の案内
出席者全員に、2004年7月22日開催予定の第7回専門研究会案内状を配布し、日時・場所・講演者・題目を知らせた。
(Web-site参照 http://www.wdc-jp.com/msj/kenkyu/hikari/index.html)
- 今回の感想
今回の研究会では、医用磁性ナノビーズの応用技術および生体内のフェライト生成に関する講演が行われ、磁性ナノ微粒子に興味を持つ多くの研究者・学生が参加した。特に今回は、東工大21世紀COEプログラム「生命工学フロンティアシステム」との共催、英国大使館の協賛による国際研究集会とし、講演、質疑応答とも英語を使用した。冒頭、同大使館科学技術参事官によるオープニングアドレスがあった。講演後の懇親会を含めて、全講演とも多くの質問があり出席者の関心が高いことを示した。また、本研究会発足以来、最多の出席者数であった。
(東工大 阿部正紀、理研 野田紘憙 )
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