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第76回マイクロ磁区専門研究会
日 時:2002年2月8日(金) 13:30〜17:00
場 所:日本電信電話(株) 武蔵野研究開発センタ
参加者:約30名

講演テーマ:

1. 「反強磁性/強磁性積層膜における交換結合バイアスのメカニズム」
三俣 千春,佐久間 昭正 (日立金属)
2. 「放射光光電子顕微鏡を用いた微小磁性体の磁区構造観察」
小野寛太(東大工),木下豊彦(東大物性研)
秋永広幸(ナノ機能合成 研究体:産総研),E. Bauer(アリゾナ州立大)
尾嶋正治(東大工)
3. 「垂直磁気記録におけるメディアのM-Hループ傾きの記録と熱磁気安定性への影響」
本多直樹,木谷貴則,大内一弘 (秋田県高度技術研究所)
4. 「異常ホール効果を用いた垂直磁気記録媒体の磁化過程解析」
中川茂樹,D.Sarbanoo,佐々木一郎(東工大)
  今回は,反強磁性/強磁性界面の交換結合,放射光を利用した磁区観察技術,垂直磁気記録媒体のマイクロ磁気シミュレーション,異常ホール効果による磁化過程解析と多岐にわたるテーマを取り上げたが,いずれも微小な領域のスピン構造を実験的に,また,シミュレーションによって解析するというマイクロ磁区専門研究会にふさわしい内容で,集まった約30名が時間を超過して熱心に討論を行った。
 日立金属の三俣氏は,反強磁性/強磁性積層膜における交換結合のメカニズムを3次元のLLG方程式を数値的に解くことにより解析した結果を報告した。Mnと非磁性金属からなる2元合金においては,組成によってスピン構造が変化すること,Mn組成の高いときに現れる3Qスピン構造においては,compensate面においても,ループシフトが発生することなどが示された。
 東大の小野氏は,放射光光電子顕微鏡(SR-PEEM)を用いたNi微小磁性体の磁区構造およびNiO表面の反強磁性磁区を観察した結果を報告した。磁気像が,NiのL2吸収端とL3吸収端で観察したイメージの割り算によって得られ,表面モフォロジーの影響が除去されることが説明された後,微小磁性体の形状によって磁区構造に違いが見られること,その磁区構造がマイクロ磁気シミュレーションによってほぼ説明できることなどが示された。
 秋田県高度技術研究所の本多氏は,媒体の粒子間交換相互作用が垂直記録の記録分解能に与える影響について,M-Hループの変化に注目し,マイクロ磁気シミュレーションにより解析した結果を報告した。粒子間交換相互作用を強くしていくと,媒体の垂直方向ループは角形に立ち上がった形状となるが,このような条件で磁化遷移領域も急峻となり,現象論的にループの傾きを大きくすることが高密度記録に必要であることを示した。また,1Tbpsiクラスの超高密度記録を実現するためには,熱磁気安定性の観点からCo/Pd系などの強い垂直磁気異方性を有する媒体を必要とすることなどが示された。
東工大の中川氏は,媒体磁化に起因して起こるホール効果(強磁性ホール効果)を磁化の垂直成分/面内成分に起因する項を分離し,試料の磁化をベクトル的に解析する方法について報告した。本手法により垂直磁気記録用二層膜媒体などの試料においても実効的な磁化ベクトルがどの方向を向いているか解析可能であること,また,ベクトル的にδMプロットに相当する値を算出してCoCr合金系およびCo/Pt多層膜試料の実効磁化ベクトルを解析した結果,Co/Pt多層膜で磁化の垂直方向のインタラクションがより強く観察されたことなどが示された。

(名古屋大学 岩田 聡、NTT 黒川 義昭)