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第74回マイクロ磁区専門研究会
日 時:平成13年10月26日(金) 午後1時半〜5時
場 所:東芝 研修センター(横浜)
参加者:36名

講演テーマ:

1. 「スピン偏極量子井戸順位へのトンネル電子の注入−TMR効果の量子井戸振動−」
湯浅新治、長浜太郎、安藤功兒、鈴木義茂(産総研)
2. 「Synthetic Ferrimagnetic Media for over 100 Gb/in2 Longitudinal Magnetic Recording」
B.R. Acharya (富士通研)
3. 「FeCo合金を用いたCPPGMR」
湯浅裕美、吉川将寿、鴻井克彦、高岸雅幸、岩崎仁志、佐橋政司 (東芝)
4. 「光磁気記録における高速磁区応用観測と磁界変調三日月磁区記録シミュレーション」
伊藤彰義(日大)
 まず、産総研の湯浅氏から、MBEによる良好な(100)単結晶エピのTMRで、アルミナとCoの間に挿入したCu膜厚によるMRの振動現象が、金属GMRと同様に出現することが紹介された。Cu厚が約0.4nmではMRの符号が反転する明確な振動であり、トンネルバリアーを通してスピンを保持した電子がCu層内に注入され、量子井戸型順位が形成できたことを意味する。界面構造の工夫でMR比の増大等の新たな発展への道を拓くものであり、2重トンネルバリアーによる量子井戸構造への応用も期待される。
 Acharya氏から、NOL (Nano Oxide Layer)スペキュラGMRヘッドとの組み合わせで100Gb/in2のデモに用いた、Ru層を介した反強磁性結合を利用したSynthetic Ferrimagnetic Media の性能が紹介された。Ruを介した上下記録層(CoCrPtB)のKuを大きめに、Ruの交換結合力やMsを小さめにして、高SN比で熱揺らぎ耐性も良好な面内媒体が実現できる。最後には、100Gb/in2120以上の可能性にも議論がおよび、媒体のMrtが減少して、Kuもさらに増大するので、ヘッドに対して読出し能力および書込み能力を高める必要があるとの厳しい要求も示された。
 東芝の湯浅氏から、垂直通電型のスピンバルブGMRで、従来のCo90Fe10材料に比べて約3倍の高い抵抗変化(ボトム型で〜3mΩm2、デュアル型で〜5mΩ2)を示すCu積層Fe10Co10合金新材料が紹介された。fcc相のCo90Fe10をbcc相のFe50Co50に換えることで界面散乱がアップし、さらにCu積層によりバルク散乱がアップする。Cuは固溶しているのかあるいは、変調構造となっているのか、今後のメカニズム解明、さらなる高抵抗変化の実現が期待される。
 最後に、伊藤氏から、磁界変調記録で記録される三日月磁区について,任意磁区形状の磁壁移動シミュレーション手法で解析した結果が紹介された。記録磁区マーク長50nmで記録磁区が形成することが示された。また、記録磁区を転写拡大して再生するMAMMOSの研究では、磁壁の移動速度を知ることが重要であり、磁壁移動速度を1nsec以下(最短200psec)の高速度で観察するシステムを構築した。実験から外挿すると、室温でも200Oeで180m/sの磁壁移動速度を有することが示された。以上から、光磁気記録に使われている非晶質膜で磁気記録に匹敵する記録密度と転送速度が実現できる可能性が示唆された。

(東芝 岩崎仁志、 日大 中川活二)