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第72回マイクロ磁区専門研究会
日 時: 平成13年4月13日(金)13:30〜17:00
場 所: 大橋会館(東京都目黒区)
参加者: 40名

講演題目:
  1. ハードディスク媒体の計算機シミュレーションによる活性化体積検討
    五十嵐万壽和(日立)
  2. Fe-Pt系垂直磁気記録媒体
    鈴木淑男(秋田県高度技術研究所)
  3. コバルト最密面についてのスピン偏極トンネルとスピン偏極STM
    奥野志保(東芝)
  4. 高密度記録用TMRヘッド
    藤方潤一、石原邦彦、大橋啓之(NEC)
今回は磁気記録の高密度化に関連した最近のトピックについて4人の方に講演していただいた。大学,企業とも年度初頭の落ち付かない時期の開催にもかかわらず40名の参加を得、いつも通りの非常に活発なディスカッションの場となった。
まず、五十嵐氏より、活性化体積の印加磁界依存性、記録ビット内部の空間分布、活性化体積とスイッチング体積の関係等について、シミュレーションを用いた解析結果が報告された。可逆的な磁化成分の影響を除かないと、活性化体積の印加磁界依存性は誤ったものとなる。活性化体積が印加磁界にほとんど依存しない場合でも、可逆成分を含む磁化変化から得られた活性化体積には、3倍を越える大きな磁界依存性が見られることが示された。また、活性化体積(反転単位)の大きさは、記録ビット中央部と転位領域で比較した場合でも顕著な違いは見られないことが示された。さらに、離散系微粒子の解析から、活性化体積の磁界依存性によるスイッチング体積推定法に関する議論があった。
次に鈴木氏から、Fe-Pt系垂直磁気記録媒体に関する講演があった。高ガス圧成膜、ならびにCr、MgO下地膜を用いたヘテロエピタキシャル層構造により、FePtの結晶粒配向と規則化の促進(規則化温度の低下)が可能となり、300〜400℃の基板温度で実用的な保磁力を有する垂直異方性薄膜が得られることが示された。また、10nm以下の膜厚において、成膜条件により磁区サイズがCoCr系と同程度の70nm以下に抑えられることが示された。一方、記録層の膜厚が5nmの二層膜媒体において、安定な記録磁化状態と比較的良好な信号品質が得られることが示された。さらに、MgO等の酸化物をFe-Pt膜内部に微細に分散させた二層膜媒体の線記録密度700kFRPIの記録パターンについても報告があった。
 奥野氏からは、スピン偏極トンネルとスピン偏極STM(SP-STM)のホットな話題について講演があった。まず、Feを蒸着したW探針を用いたスピン偏極トンネル効果を、バイアス電圧を変化させて測定することで、表面形態とスピンの情報を分離して解析することが可能となる測定原理の説明があった。また、Co膜表面の局所状態密度の測定結果から、-0.43eV付近に現れるマイノリティ・スピンによる表面準位を積極的に利用することで、Coスピンの向きの違いにより、62%のMR比に対応するinverse TMRが得られることが示された。また、SrTiO3上の島状Co膜(Co最密面)のスピン状態解析を行い、室温において強磁性体表面の磁化状態をSP-STMにより観察出来たこと、また、その分解能は1nm以下に相当することが示された。
最後は、藤方氏より最近のTMRヘッドの開発と今後の課題に関する講演があった。In-situ自然酸化法でAl2O3膜を作製することで、TMR接合部を再生ヘッドに適した抵抗値に低下させることが可能であることが示された。また、縦バイアス構造を最適化することで、実効トラック幅等のセンス電流に対する変化を抑えることが可能であり、ヘッドの安定性を高めることが可能となったことが示された。また、TMR接合部の面積の低下により1/fノイズが増加すること、ならびに、ショットノイズを抑えるためにも、品質の高い極薄バリア層の形成が重要であることが述べられた。また、CoNiFe膜を用いた記録ヘッドと一体化したTMRヘッドの基本性能についても示された。特に、TMRの温度係数は負であり、且つ、GMR等に比較して絶対値が1〜2桁小さいので、ヘッド浮上量を20nm以下に低減しても、TMRヘッドではサーマル・アスぺリティ・ノイズの増加が抑制されることが示された。
(NEC 松寺久雄,東北大 島津武仁)