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日時:12月15日(金) 13時30分〜17時00分
場所:日本電信電話(株) 武蔵野研究開発センタ 本館2階プレゼンテーションホールC
参加者:約30名
講演テーマ:
- トンネルMR素子のノイズ特性 佐藤英行(都立大)
- Co/Pd人工格子垂直媒体の低ノイズ化 大森広之,前坂明弘(SONY)
- 反強磁性Mn合金の電子構造と磁性 佐久間 昭正(日立金属)
- MAMMOSの磁区拡大現象 粟野博之(日立マクセル)
今回は、同じ日に、GMRヘッド関係、光磁気関係、磁気記録関係の別の会議が重なったため、参加者数は約30名と例年に比べて少なかった。しかし、その分質疑をより活発に行うことができた。会議後の懇親会会場も同じNTT構内であったため、終了時間をそれほど気にする必要もなく満足度の高い研究会であった。
まず、都立大の佐藤先生より、次世代磁気記録再生ヘッドとして大いに期待されている強磁性トンネル接合NiFe/Al2O3/NiFeのノイズ特性に関する報告があった。トンネル接合媒体のノイズスペクトルは、バイアス電圧が低い場合にはフラットな周波数特性を示すが、バイアス電圧を高くすると低域ノイズの上昇が大きく、顕著な1/fノイズを示す。これは、2um角、4um角と接合面積の違う試料において差異が認められている。起因としては、マグノン等の磁気的非弾性過程が考えられる。このメカニズムを解明して対策が行えれば、大幅なノイズ低減が期待できる。
次に、ソニーの大森氏より、Co/Pd積層垂直磁気記録媒体に関する報告があった。この媒体は、現行リングヘッドを用いて600kfci以上というかなり高い記録分解能を有する反面、記録ノイズも大きい点が問題とされていた。しかし、Au-SiO2グラニュラー下地上にCo層、Pd層それぞれにBやOを添加したCoBO/PdBO積層膜を成長させることで、磁気的に分離した粒径7〜10nmの均一な結晶粒が生成でき、大幅なノイズ低減に成功した。ノイズレベルは、市販の10Gbit/in2用面内記録媒体以下となった。成膜温度が室温である点も大きな特徴である。
日立金属の佐久間氏からは、反強磁性Mn合金(MnPt, FeMn)の電子構造と磁性の関係について強結合(TB)-LMTO法を用いたバンド計算により理論的解釈が報告された。MnPt, FeMnの置換型不規則相についてはコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を用いている。MnPtは反強磁性相を生成が比較的困難であるのに対し、FeMnは比較的容易であるという反強磁性相生成難易の差異や、これらのネール温度の差異、電気抵抗の差異等、両者の反強磁性金属特性の違いを、上記バンド計算による電子構造シミュレーションで解釈可能であることが興味深かった。
最後に、日立マクセルの粟野氏からは、光磁気記録の高密度化技術:磁区拡大再生(MAMMOS)技術を用いて、光スポットサイズの50分の1に相当する微小磁区(約20nm)を記録して、これを光スポット一杯に拡大再生した結果が示された。この信号増幅率は100倍である。また、このGdFeCo拡大再生層の熱磁気磁化反転過程を調べた結果、キュリー温度までの昇温時間はわずかに1p秒程度、熱磁気磁化反転時間は700〜800p秒である事がわかった。これは冷却速度で律即されており、急冷構造採用により更なる高速熱磁気磁化反転実現の可能性が示された。
(NTT 黒川義昭、日立マクセル 粟野博之)
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