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日時:2000年2月25日13:30〜17:00
場所:森永プラザビル23階会議室
参加者:30名
講演テーマ:
- 微小disk状磁性体の磁気特性 本田雄士 (NEC)
- 磁性微粒子アレイの磁気特性と熱磁気効果による個々の微粒子の磁化反転 萩野谷千積、平山義幸、山本治朗、小池和幸、石橋雅義(日立)、北上修、島田寛 (東北大)
- 表面異方性を有するナノ粒子の反転磁界 仲谷栄伸、林信夫(電通大)、上坂保太郎(日本大)、福島宏(千葉市)、北上修、島田寛(東北大)
- 磁気トルク法による強磁性層/反強磁性層積層膜の交換磁気異方性解析 角田匡清、高橋研 (東北大)
今回は将来応用磁気の重要な一分野になると思われるミクロンサイズ以下の微小磁性体、および近年専ら応用に関して著しい進展を示しているGMR、TMRの基本構造である反強磁性/強磁性交換結合膜に関する基礎的検討を特集した。
先ず本田氏より、PMMA/Ge/PMMAからなる3層レジストにより形成した20nm〜1μm径ディスク状Feドットの磁化過程のドット径依存について検討した結果が報告された。SQUIDによる磁化測定、MFMによる磁区測定により、ドット径1μm程度のときは軟磁性、50nm以下では単磁区粒子を反映した超常磁性的になり、中間では磁化曲線にヒステリシスが現れ保磁力の増大が見られた。保磁力増大は多磁区構造から単磁区への移行途中の構造によるとの推定であった。今後歪特性など材料特性の影響の検討が望まれる。
萩野谷氏からはCoCr系垂直膜を柱状に加工した80nmφの磁性微粒子を150nmピッチで配列した磁性微粒子アレイの磁化反転過程が報告された。アレイ状微粒子の磁化反転過程をMFM観察により評価した結果、膜レベルで垂直配向性が良くない膜でもドット化により良好な磁化曲線が得られた。アレイ状ドットへの記録法として、コイルにより磁場を印加した上で特定のドットにMFM探針を近づけ磁束を収束し磁化反転させたところ狙いのドット以外が反転することがあり、本法では異方性エネルギーが小さいと問題があることが示された。そこで最初に磁化を飽和させた上で特定のドットにAFM探針を接触させ電流を印加することにより加熱しドットの異方性を低下させ周囲のドットからの漏洩磁場による磁化反転を検討したところ狙いのドットのみが磁化反転した。本実験は厳密には記録過程とは言えないが熱磁気効果による記録の可能性を示唆するものであり、今後磁場印加など研究の進展が期待される。
仲谷氏からは磁性微粒子の磁化反転過程をLLG法により数値計算した結果が報告された。表面磁気異方性を取りこみ、サイコロ状粒子のサイズを変えて計算した結果、数nm程度では単磁区粒子として磁化反転し、サイズの大きな場合は多磁区構造となり保磁力が減少するが、中間のサイズ50nm程度では表面近傍の磁化が花びら状に開いた形が磁化安定状態となる。そのため、磁化反転過程は複雑な経過をたどり余分なエネルギーを要するため保磁力が増大することが3D動画表示によりわかり易く説明され、また本結果はSiO2中分散したFe微粒子の保磁力測定結果と定性的に一致することが示された。表面異方性についてはこれからの研究が待たれる部分があり、新しく得られた結果を取りこんだ計算により更に興味深い結果が得られると期待される。
角田氏からはウルトラクリンプロセスで作製したMnIr/NiFeニ層膜の磁気トルクの磁場依存性測定結果が報告された。磁場を強くしてゆくとMnIr膜厚が薄い場合は一方向異方性から一軸異方性に変わるが膜厚が厚い場合は一方向異方性を維持し回転ヒステリシスも生じないという結果が得られた。これらの結果は、反強磁性膜が互いに独立で、ランダムな異方性の方向をもつ多数の反強磁性微粒子から成るとするSingle Spin Ensemble Modelで説明できることが示された。また、MnIrの組成、成膜条件を変えた交換結合膜の場合、交換結合エネルギーは組成、成膜条件に依存するが、一方向異方性から一軸異方性に変化する臨界膜厚は依存しないこと、後者についてはSingle Spin Ensemble Modelでは説明し難いことが示された。これらの結果は従来各所でなされている測定結果と必ずしも同一ではなくウルトラクリンプロセスによる交換結合膜の特徴とも考えられ、更なる検討進展が期待される。
(NEC 松寺久雄)
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