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第62回マイクロ磁区専門研究会
日時:1999年2月26日(金) 13:30〜16:30
場所:ソニー(株)中央研究所
参加者:36名

プログラム:
  1. 積層強磁性膜の磁化構造   萬 雄彦(日立マクセル),Xiao Hu(金材技研)
  2. 垂直磁化膜の磁化反転機構              吉田和悦(日立中研)
  3. 微小トンネル接合の作製と磁気抵抗効果    久保田均,大塚茂樹,福本能之,上條誠,村井純一郎,手束展規,安藤康夫,宮崎照宣(東北大)
  4. AFM/MFM装置を利用した記録ヘッド及びMRヘッドの測定   大森広之(ソニー)

日立マクセルの萬氏は,1次元モデルを用いて,両端に垂直磁気異方性,その間に面内磁気異方性を有する3層構成強磁性薄膜の磁化構造(磁化の角度分布)について解説した.磁化構造は各層の磁気定数と面内層の膜厚に大きく依存する.さらに本系に外部から磁界を印加した場合の安定構造を変分法により準静的に求め,磁化反転に対する面内膜の影響についても言及した.非対称3層構成では,面内層の膜厚がある程度以上厚いと,垂直層が1層ずつ反転し,逆に薄い系では両端の垂直層が一度に反転する.3層全てが垂直異方性を有する系とも比較がなされ,従来から言われてきた欠陥モデルによる保磁力の発生機構に関して有用な知見が与えられた.

 日立中研の吉田氏は,LLG方程式を用いた垂直磁気記録用磁性膜の磁化過程のシミュレ−ション結果について報告した.実験的に決定された磁気定数(磁化,異方性定数,交換定数)を用いて磁化曲線を計算すると,実測されるCo-Cr系合金膜のものと明らかに異なる.実測結果を説明するためには,弱い磁気異方性の欠陥領域の存在を仮定することが必要で,内部に欠陥が散在する場合,表面に局在する場合などについて,詳細な計算をおこなった.その結果,磁性膜表面あるいは基板界面における弱い磁気異方性を仮定することにより,実測結果と非常に良い一致が得られることが報告された.

 東北大の久保田氏は,ミクロンサイズのFe-Ni/Co/Al-O/Co強磁性トンネル接合の作製プロセスと磁気抵抗効果について最近の実験結果を紹介した.素子サイズは最小3x3μm^2である.Arイオンミリングのプロセスで接合側面の再付着により接合の特性が劣化する事を示し,再付着の少ない条件の検討結果を述べられた.更に,トンネル抵抗値及びTMR比のAl膜厚およびICP酸化時間依存性を詳細に調べ,最も抵抗値の低い接合は4x10^3 ohm・μm^2で,15%のTMR比であった.これは,プラズマ酸化を用いて作製した接合のこれまでの報告値の中で最も低く,NECグループによる自然酸化で作製した比較的高いTMR比の接合抵抗値と同程度であることが報告された.

 ソニ−の大森氏は,微小領域の観測が容易なAFM/MFM装置を利用した,記録ヘッドの高周波磁界測定及びMRヘッドの感度分布測定の原理と測定結果を報告した.記録ヘッドを高周波電流で駆動しながら磁気力の測定をすると,軟磁性探針では連続的なコントラスト像が得られ,硬質磁性探針では一定磁場を結ぶ線状のコントラストが観測される。また,探針の振動による磁場の変化でMRヘッドを局所的に励磁して,ヘッド信号を検出するとMRヘッド素子の感度分布,バルクハウゼンノイズや非線形性の発生箇所を特定できることが明らかにされた.

 上記4件いずれの講演も大変興味深い内容であり,終始活発な質疑討論がなされた.

(東北大 北上 修)