日時:平成8年4月26日(金)
場所:日本アイ・ビーエム大和事業所
連絡先:82名
今回の研究会では,INTERMAG’96で注目されたスピンバルブヘッド関係2件,垂直磁気記録媒体1件,マイクロマグネティクスの観点で興味深いアモルファスワイヤ1件の併せて4件の講演が行われた。
講演題目:
- アモルファスワイヤの磁区構造とセンシング機能
山崎二郎(九州工業大学 工学部)
- CoFe系スピンバルブGMRヘッド<
佐橋政司(東芝 研究開発センター)
- NiFe/CoFeスピンバブルヘッドとCoCrPt媒体を持いた5Gbit/In2記録
金井 均(富士通研究所)
- MRヘッドを用いた垂直磁気記録における高S/N化の検討
池田圭宏(日本アイ・ビーエム)
九工大の山崎先生から,Fe-Si-BやCo-Si-Bなどのアモルファスワイヤの磁区構造に関する報告があった。ワイヤ内部のコアと表面に近いシェル磁区を調べ,またモデル化して,M−Hカーブがどうなるかを検討した。また,ワイヤ形成時のストレスの発生が時期特性に影響していることがわかった。複雑な磁区構造を解明した点で,まさにこの研究会にふさわしい発表であった。
東芝の佐橋さんからは,Co−Fe膜とIr−Mn膜とを使った,5Gbit/in2用スピンバルブヘッドの報告があった。耐食性とCu層との相互拡散の点でこの二つの組成の膜は効果がある。約1.3mVの出力が得られた。書き込みヘッドでは,上部磁極をSiO2膜に形成した溝に磁性膜を埋め込む方式により,トラック幅1μmを実現した。このヘッドを2.5インチハードディスクドライブに組み込み,5Gbit/in2(2250kBPI,20kTPI)の記録再生をすることに成功した。
富士通の金井さんからは,5Gbit/in2を実現するために必要な要素技術についての報告があった。スピンバルブヘッドでは,Co−Fe膜を使ってCuとの相互拡散を防止し,トラック幅1μm,バイアス電流5mAで0.5mVの出力を得た。記録媒体としては,CrMo下地層上に形成した,Hc2500OeのCoCrPtTaを用いた。20kTPIを実現するために,二段アクチュエータを採用した。
日本アイ・ビー・エムの池田さんからは,MRヘッド用としてCr量を多くした,低ノイズCoCr垂直磁気記録用媒体の報告があった。Cr量を増加することにより,Msは下がるが,結晶軸の配向が改善される。また,膜面と垂直方向の結晶間の磁気的相互作用が大きくなり,膜厚が大きい場合にも,十分に媒体下部まで書き込みが可能となる。膜厚300nmで30dB以上と大きなS/N比を得た。
各講演とも,多くの質問や活発なディスカッションが行われ,予定よりも30分以上遅れて終了した。その後,恒例の懇親会を行い,9:00過ぎまでディスカッションが続いた。
(日本IBM 豊岡 記)
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