60.01

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
光電子顕微鏡(PEEM)とシングルショットKerr顕微鏡を用いて、パーマロイナノワイヤの磁壁移動の振る舞いを直接観測
出典:
Journal of Magnetism and Magnetic Materials, doi:10.1016/j.jmmm.2009.06.048, T.A.Moore et al., “Domain wall velocity measurement in permalloy nanowires with X-ray magnetic circular dichroism imaging and single shot Kerr microscopy”
概要:
 Konstanz大学のT.A.Mooreらは光電子顕微鏡(PEEM)とシングルショットKerr顕微鏡を用いてパーマロイナノワイヤにおける磁壁移動速度の測定を行なった。
本文:
 
ナノスケール磁性体ワイヤーにおける磁壁移動現象はデータストレージや演算回路において応用上非常に重要である。しかしながら、スピン流を用いた磁壁移動のダイナミクスはまだ理解が完全でない。そこでMooreらは幅1500nm、厚さ20nmのパーマロイナノワイヤについて、円偏光軟X線光電子顕微鏡(MCD-PEEM)とシングルショットKerr顕微鏡を用いて磁壁移動速度を測定し、磁壁移動ダイナミクスを議論した。XMCD-PEEMを用いる事で、電流誘起による平均磁壁移動速度が電流密度に対して調査された。また、Kerr顕微鏡では、磁場誘起された磁壁移動速度の局所情報が観測された。更にPEEMでは、電流パルスが印加された際に磁壁のスピン構造がどのように変化するかを調査することができた。その結果Walker breakdown現象の生じる電流密度を正確に決定することができた。シングルショットKerr顕微鏡では、磁壁移動の統計的振る舞いを特徴付ける量として、磁壁のdeppining fieldと速度の振る舞い両者を観測するのに用いられた。最終的に、この一次元モデルにおいては、磁壁スピン構造、転移、熱の効果、ピンニングポテンシャルの空間的なばらつきなど様々な効果が磁壁移動現象を複雑にしており、完全な理解のためにはこれらの効果を計算のモデルに組み込む必要があることが示唆された。 

(SPring-8/JASRI 小嗣真人)

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