31.02

分野:
磁気物理、スピントロニクス
タイトル:
フルホイスラー合金を用いた強磁性トンネル接合における大きな室温磁気抵抗効果
出典:
Appl. Phys. Lett. 89, 252508 (2006)
概要:
  物質材料機構の猪俣らのグループは、フルホイスラー合金を電極に用いた強磁性トンネル接合において室温で175%の磁気抵抗効果の観測に成功した。
本文:
 最近、Co基フルホイスラー合金を電極に用いた強磁性トンネル接合において、磁気抵抗効果が著しく増大している。東北大の宮崎らのグループでは、フルホイスラー合金Co2MnAlを用いて、室温において65%の高い磁気抵抗効果を得た(Appl. Phys. Lett. 88, 022503 (2006))。その後、物質材料機構の猪俣らのグループは、フルホイスラー合金Co2FeAi0.5Si0.5(CFAS)を用いて、室温において175%の非常に高い磁気抵抗効果(TMR)を観測することに成功した(Appl. Phys. Lett. 89, 252508 (2006))。同グループでは、スパッタ法を用いてMgO障壁の上にCFAS膜を作製し、CFAS/MgO/CFASエピタキシャル接合において室温TMR=175%を得ている。この値はハーフメタル材料としては、現在世界最高値である。低温でのTMRは356%でありスピン分極率80%に相当している。この系はTMRの温度変化に優れているという特徴があり、今後の研究の進展によりスピン分極率が90%を超えると期待される。また、北大の山本らのグルーも、フルホイスラー合金CoCr0.6Fe0.4Alを用いて、室温で大きな磁気抵抗効果を得ている(Appl. Phys. Lett. 90, 012508 (2007))。このように、ハーフメタルの開発において、より高いスピン分極率、室温で巨大なTMRが達成されれば、ハーフメタル材料がMRAMの大容量化など、今後のスピントロニクスの進展に大きく寄与するものと期待される。

(東北大金研 高橋三郎)

スピントロニクス

前の記事

32.02
スピントロニクス

次の記事

31.05