219.01
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【分野】 磁性材料
【タイトル】 環境振動発電のための高軟磁性かつ高磁歪特性を両立するFe-Ga基ナノ結晶材料
【出典】
・名古屋大学(2024年3月プレスリリース)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/03/post-633.html
・東京理科大学(2024年3月プレスリリース)
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240301_1827.html
・Kohya Sano, Takahiro Yamazaki, Ryo Morisaki, Chiemi Oka, Junpei Sakurai, Seiichi Hata
“Soft magnetostrictive materials: enhanced magnetostriction of Fe-based nanocrystalline alloys via Ga doping”, Scripta Materialia Vol 242, 115956.
DOI: 10.1016/j.scriptamat.2023.115956
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1359646223006772
【概要】
名古屋大学大学院工学研究科 秦誠一 教授、佐野光哉 博士後期課程学生と、東京理科大学 山崎貴大 助教らのグループは、高軟磁性特性を示すFe基ナノ結晶合金へのGa添加により、大磁歪と高軟磁性を両立するFe-Ga系ナノ結晶材料の創出に成功した。軟磁性Feナノ結晶材料中のナノ結晶相はFe-Ga結晶となり、アモルファス相の磁歪の符号と整合することで、材料全体の磁歪量が増大することを実証した。磁歪と軟磁性特性が両立する指標である磁歪感受率は従来ナノ結晶材料の1.77倍に向上し、優れた磁歪特性が示された。
【本文】
IoT社会の実現のためには、IoTセンサに対する無線電力供給が課題となっている。振動・熱・光などの通常捨てられるエネルギーをW~mWの電力に変換し利用する環境発電技術が注目されている。その1つである、磁歪材料を利用した振動発電では、力により材料の磁化が変化する逆磁歪効果を利用している。大発電量化のためには高い磁歪感受率、すなわち、大磁歪と高軟磁性を両立する必要がある。
今回、Fe基軟磁性ナノ結晶材料であるNANOMET®️がベース合金として用いられた。ナノ結晶材料では、結晶相Feの負の磁歪と非晶質母相の正の磁歪が相殺し、材料全体で磁歪量がほぼゼロになる。Feとの合金で高い磁歪特性を示すGaを添加元素として選定された。高軟磁性特性を維持したうえで高磁歪を実現するため、負の磁歪を示すFeナノ結晶相から正の磁歪を示すFe(Ga)相とする。そのときナノ結晶相と非晶質相の磁歪の符号が揃うとき、材料全体の磁歪を増大させ、高軟磁性特性を維持しつつ材料全体の高磁歪特性を得ること期待できる (Fig. 1)。
実証のためGa元素を添加したナノ結晶スパッタ膜が作製された。Ga添加量の増大とともにFe(Ga)結晶相の磁歪が負から正となることに起因し、ナノ結晶材料全体の磁歪量が増大することが確認された。また印加磁場に対してどれだけ磁歪が生じるかを示す磁歪感受率は、ベース合金の1.77倍まで向上した。(Fig. 2)
今回の研究成果により大磁歪と高軟磁性を両立するナノ結晶軟磁性磁歪材料の設計指針が提示された。環境振動発電素子やひずみセンサなどデバイス応用への展開が期待される。
(鹿児島大学 三井好古)