152.01
【分野】軟磁性材料
【タイトル】紛体冶金プロセスに基づく新規Fe基軟磁性材料の開発
【出典】
・紛体粉末冶金協会 平成29年度秋季大会 (第120回講演大会)概要集
3―16A 新規Fe基軟磁性粉体の開発:1.磁気特性の評価
(産総研)○今岡 伸嘉,山本 真平,松本 章宏,尾崎 公洋
3―17A 新規Fe基軟磁性粉体の開発:2.構造特性の評価
(産総研)○山本 真平,今岡 伸嘉,松本 章宏,尾崎 公洋
・特許:国際公開番号WO 2017/164375、同WO 2017/164376
【概要】産業技術総合研究所の今岡らは、湿式合成したMnフェライト粉末の還元処理による新規なFe基軟磁性材料を開発した。高性能かつ低コストな自動車用モータ等への応用が期待される。
【本文】
化石燃料の使用による地球温暖化の深刻化が懸念される中、自動車の動力源をガソリンから電気へシフトする流れは益々加速すると考えられる。現在自動車に使われているモータのステータ用軟磁性体は電磁鋼板を数百層積層することで製造されており、より簡素な工程によるによる低コスト化が求められている。いっぽうモータの更なる高性能化のためには飽和磁束密度の向上と鉄損の低減が必要となる。
このような要請を背景に、国立研究開発法人産業技術総合研究所磁性粉末冶金研究センターの今岡氏らのグループは、低コストな粉末冶金プロセスによる新規軟磁性紛体の合成を検討してきた。今年11月に開催された紛体粉末冶金協会で同グループは、新しいFe基軟磁性材料を発表した。新たな材料は、化学的プロセスにより粒径5~50nmに調整したマンガンフェライトナノ粉体を合成し、これを水素ガス還元により金属粉体とすることで得られる。本手法で作製されたFeとMnの組合せの材料は、通常の溶解法では得られないであろう2 Tの高い飽和磁化と10 A/mの低保磁力を兼ね備えている。またMn特性X線面分布図およびTEM-EDX法に基づく観察から、本材料はFe-Mn金属とMnOウスタイト相の混合物層からなることが分かった。
今回得られた材料の特性発現のメカニズム解明と今後の特性の改善が期待される。
(大同特殊鋼 宇根康裕)