129.01
- 分野:
- 磁性材料
- タイトル:
- FeCo系に正方歪5%導入で磁気異方性0.46MJ/㎥発現
- 出典:
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L. Reichel, L. Schultz, S. Fäller, J. Appl. Phys. 117, 17C712 (2015)
河原崇範、松浦昌志、手塚展規、杉本諭、電気学会研究会資料MAG-15-160
M. Matsuura, N. Tezuka, S. Sugimoto, J. Appl. Phys. 117, 17A738 (2015)
T. Y. Tashiro, M. Mizuguchi, T. Kojima, T. Koganezawa, M. Kotsugi, T. Ohtsuki, K. Takanashi, J. Appl. Phys. 117, 17E309 (2015)
A. Makino, P. Sharma, K. Sato, A. Takeuchi, Y. Zhang, K. Takenaka, www.nature.com/scientificreports, 5:16627 | DOI: 10.1038/srep16627 - 概要:
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c/a=1.25を実現すれば次世代希土類フリー磁石となり得るとされているFe基合金に微量元素を添加し体心正方晶に自発的に歪ませることにより高磁気異方性を獲得する探索研究がいくつかの研究グループにより進められているが、東北大学の研究グループはTiとNの導入によりc/a=1.05が62nmの膜で維持され、磁気異方性0.46MJ/㎥が発現することを示した。
- 本文:
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FeCoの格子を正方晶に歪ませ体心立方にした場合、c/a=1.2~1.25の時に高い磁気異方性が発現し、FeCo合金の高磁化と相まって非希土類系磁石として利用できる可能性があるとされ、エピ成長薄膜を使って歪を導入する研究がなされてきたが、そのような大きな歪をバルク合金で実現することは困難であるとされている。IWF-Dresden/TU DresdenのReichelらはAu-Cuバッファ上に炭素を添加した(Fe0.4Co0.6)0.98C0.02スパッタ膜が4nm以上の膜厚で約4%の歪を維持し0.8MJ/㎥の垂直磁気異方性を示すと報告し、東北大学のMatsuuraらはRhバッファ上に窒素ガス流気下で作製した厚み23.5nmのFeCo-Ti-Nスパッタ膜でFeCo相がc/a=1.08の正方歪を維持し、0.57MJ/㎥の磁気異方性を発現することを示した。さらに東北大学の河原らは12月1日に開催された(社)電気学会のマグネティックス研究会で、膜厚7.7nmでは1.39MJ/㎥の高磁気異方性が発現し、膜厚を62nmまで厚くしたFeCo-Ti-N膜でもc/a=1.05を維持し0.46MJ/㎥が得られると報告した。鉄系規則化合金についてはL10-FeNi系でも高磁気異方性発現のための研究が進められており、東北大学金属材料研究所のTashiroらはアモルファス基板上に製膜した厚み5nmのFeNiスパッタ膜を300℃で熱処理した場合に直径約100nmのL10-FeNi相が島状に生成し、膜面内方向に約64kA/mの保磁力、約1.26T (約1000emu/cc)の残留磁化が発現することを示したほか、Makinoらは液体超急冷法で作製したFe42Ni41.3Si8B4P4Cu0.7合金リボンが400℃で熱処理後に約56kA/mの保磁力を示し、Fe3B、α-Feとともに規則化パラメータS=0.8の微細なL10-FeNiが体積比率で約8%生成していると報告した。
これらのFe基合金が実用的な保磁力を有する将来非希土類バルク磁石材料の候補物質として検討されるためには、高い飽和磁化を残留磁化として支えるに足る高い結晶磁気異方性(FeCo系では4MJ/㎥、FeNi系では2MJ/㎥よりそれぞれ十分大きい程度と考えられる)の発現が必要であり、今後の基礎的探索研究の展開が注目される。
(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 元素戦略磁性材料研究拠点 広沢 哲)