116.01

分野:
磁性材料
タイトル:
NIMSが高磁化・高磁気異方性・高キュリー温度の新化合物NdFe12Nxを合成
出典:
Y. Hirayama, Y.K. Takahashi, S. Hirosawa, K. Hono, “NdFe12Nx hard-magnetic compound with high magnetization and anisotropy field,” Scripta Materialia, Corrected Proof, DOI: 10.1016/j.scriptamat.2014.10.016
NIMS-JST共同プレスリリース「レアアース量の少ない新規磁石化合物の合成に成功、最強の磁石化合物Nd2Fe14Bを超える磁気特性」、2014年10月20日、http://www.jst.go.jp/pr/announce/20141020/index.html
http://www.nims.go.jp/news/press/2014/10/201410200.html
http://www.nims.go.jp/ESICMM/news/news/2014/hdfqf1000000aqda.html
 
 
概要:
 独立行政法人 物質・材料研究機構元素戦略磁性材料研究拠点の宝野和博フェローのグループは、Nd-Fe-B系異方性磁石の主相Nd2Fe14Bよりも少ない希土類元素濃度で、同等以上の優れた磁気特性を持つ新規磁石化合物NdFe12Nxの合成に成功した。
 
 
本文:
 これまでに、希土類元素濃度が最も低いハード磁性化合物として、NdFe11TiNなど、Feの一部をTiなどの元素で置換した物質が安定に合成できるThMn12型結晶構造の磁石化合物が知られていたが、今回、独立行政法人 物質・材料研究機構元素戦略磁性材料研究拠点の宝野和博フェローのグループは、ヘテロエピタキシャル成長法を用いることにより、単結晶MgO基板上にタングステンを下地層としてTi等の著しい磁化低下を引き起こす安定化元素を用いずにThMn12型結晶構造を有するNdFe12を成長させ、さらに窒素ガス中熱処理により窒素元素を結晶格子中に導入し、NdFe12Nx化合物の薄膜試料の合成に成功した。試料は若干のFeを第二相として含むが、NdFe12NxがNd2Fe14Bを凌ぐ固有物性値、すなわち、異方性磁界(約8テスラ)、飽和磁化(5%の誤差で1.66テスラ)、キュリー温度(約550℃)を持つことを明らかにした。この結果は、元素戦略磁性材料研究拠点の三宅(産総研)らによる理論的予測(J. Phys. Soc. Jpn. 83, 043702 (2014))を実証するものである。今回はエピタキシャル法を用いているが、厚み350nmの試料が合成されていることから、一旦NdFe12相が生成すれば化合物が成長できることが示唆される。またNd2Fe14BではNdの質量比が27%であるのに対し、NdFe12NxではNdの質量比がわずか17%で済む(x = 1として算出)ことも、注目すべき特徴である。NdFe12Nxは他の窒素侵入型化合物と同様に550℃近傍で熱分解する。永久磁石として利用されるためには、保磁力の発現および粉末の合成など、いくつものハードルを越えていく必要があるが、高い固有物性値を持つハード磁性化合物が研究開発対象として新たに加わったことにより、希少元素に依らない高性能永久磁石の実現に向けての開発研究がさらに活性化されることが期待される。

(物質・材料研究機構 元素戦略磁性材料研究拠点 広沢 哲)

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