75.01
- 分野:
- 磁性材料
- タイトル:
- Nd-Fe-B磁石の結晶界面の構造欠陥層が隣接相と関係
- 出典:
- Applied Physics Letters 97, 232511 (2010)
- 概要:
- シェフィールド大のGino HrkacらはNd2Fe14Bの(110)面とfcc-Nd(011)面およびhcp-Nd(110)面との界面周辺の原子配列の乱れに関するシミュレーションにより,Ndの結晶構造が異なると界面近傍におけるNd2Fe14Bの原子配列の乱れに違いがあることを示し,保磁力との関連を議論した。
- 本文:
- 英国シェフィールド大のGino Hrkacらは最近Applied Physics Lettersに発表した論文で,Nd2Fe14Bに対して第一原理計算によりエネルギー最小となる構造を求め,焼結磁石に見られるNdリッチ相との界面を模したfccとhcp構造のNdとの界面を構成してその近傍の原子配列を計算し,比較した.ただし,現実の焼結磁石ではfcc相は酸素を含むNdOx,hcp相はdhcp構造のNd2O3酸化物相である.Nd2Fe14Bの(110)面とfcc-Nd(011)面およびhcp-Nd(110)面との界面を比較すると,fcc-Ndの場合はひずみの大部分がNdリッチ相内に限られ,Nd2Fe14B相表面のひずみは深さ0.8nmの非晶質層の生成に留まったが,hcp-Ndの場合はひずみがNdリッチ相とNd2Fe14B相の両方に等しく分布しNd2Fe14B相表面の非晶質層の厚みが1.8nmに達した。これらの非晶質層内部では結晶磁気異方性が低下していると考えられ、ひずみプロファイルに基づいて異方性低下層を導入した粒径20nm-300nmの粒子に対するマイクロマグネティックシミュレーションの結果は異方性低下層を導入しない場合と比較して保磁力が約60%に低下することを示した。この結果は透過電子顕微鏡による焼結磁石やモデル界面での解析で示唆されているNd酸化物相の種類とNd2Fe14B相表面の結晶構造の乱れおよび保磁力との関連と整合する.
(日立金属(株) 広沢 哲)