73.03

分野:
磁性材料
タイトル:
L10型FeNi規則合金の磁気異方性および磁区構造
出典:
第34回日本磁気学会学術講演会概要集(2010) pp.288-290.
 
 
概要:
東北大金研とSPring-8の研究グループは、近年、レアメタルを用いない規則合金として注目を集めているL10型FeNi規則合金について、その磁気異方性および磁区構造に関する3件の研究発表を行った。その中で、実際に作製したL10型FeNi規則合金において7.0×106 erg/cm3のKuが得られたこと、光電子顕微鏡(PEEM)による磁区構造の3次元解析により、L10型FeNi規則合金の高い垂直磁気異方性を反映したブロッホ磁壁の形成を確認したことなどを報告した。
 
 
本文:
東北大金研とSPring-8の研究グループは、近年、レアメタルを用いない規則合金として注目を集めているL10型FeNi規則合金について、その磁気異方性および磁区構造に関する3件の研究発表を行った。L10型FeNi規則合金は、鉄隕石中に発見されたもので、α相とγ相の界面に析出する特異な結晶構造を持つ合金である。L10型結晶構造を有する規則合金としてはFePtやCoPtなどがあり、非常に大きな結晶磁気異方性を示すことから、次世代の磁気記録媒体として注目されている。これらに対して、L10型FeNi規則合金は同様の結晶構造を有することから大きな結晶磁気異方性が期待でき、かつレアメタルを用いないという点で優位性があると考えられている。非磁性かつL10型FeNi規則合金との格子整合性を考慮したAu-Cu-Ni合金下地層を用い、単原子交互積層によりL10型FeNi規則合金が得られた。基板温度100℃以上で成膜することで高い結晶磁気異方性が発現し、その値はKu=7.0×106 erg/cm3程度であった。また、この膜の規則度は約0.46であることが示されたが、規則度と磁気異方性定数の相関はほとんど無いことから、格子ひずみの影響が大きいであろうとの見解が示された。これを確かめるために、第一原理計算に基づく計算機シミュレーションを行ったところ、a軸とc軸の比によって磁気異方性エネルギーは変化し、c軸がわずかに短いところで極大を示すことが報告された。また、光電子顕微鏡(PEEM)を用いてL10型FeNi規則合金における磁区構造の3次元解析を行った結果、着磁した状態では面直方向に立ち上がった磁気モーメントが観測され、ブロッホ磁壁の形成が示唆された。これはL10型FeNi規則合金の高い垂直磁気異方性を反映したものと考えられる。

(埼玉大学 柿崎 浩一)

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