73.02

分野:
磁性材料
タイトル:
第21回希土類磁石ワークショップ(REPM10)におけるDyレス化技術の研究動向と保磁力メカニズム解明への取り組みについて
出典:
Proceedings of the 21st Workshop on Rare-Earth Permanent Magnets and their Applications (29 August – 2 September 2010, Bled, Slovenia), Edited by Spomenka Kobe and Paul McGuiness, Published by the Jo?ef Stefan Institute, Ljubljana, 2010
 
 
概要:
8月29日~9月2日にスロベニア・ブレッドのHotel Topliceで第21回希土類磁石ワークショップが開催され、保磁力メカニズムの解析とNdFeB磁石の省Dy化技術に関する最近のトピックスが議論された。
 
 
本文:
8月29日~9月2日にスロベニア・ブレッドのHotel Topliceで第21回希土類磁石ワークショップが開催された。保磁力メカニズムの解析とNdFeB磁石の省Dy化技術に関する多くの講演があった。

特筆すべき報告としては㈱インタメタリックスの佐川らによるDyフリーNdPrFeB焼結磁石で20kOeを超える保磁力を持ちながら、50MGOeものエネルギー積を達成したという報告がある。佐川らはHeガスで従来のN2ガスジェットミルよりも3倍の速度までガス流速を加速することで1μm程度まで粉末を微細化した。さらに磁粉の酸化を極限まで抑制し900℃程度の低温で焼結することで結晶粒の粗大化を抑制することに成功した。一方、日立金属㈱とNIMSの共同研究、及び、愛知製鋼㈱は、それぞれが、300nm程度の結晶粒を持つHDDR粉末へNdCuやNdAlを拡散させ20kOeに迫る保磁力を発現させた。これらの取り組みは日本における磁石材料のレアメタルレス化に対する取り組みの大きな成果であり、HV車の普及に対して追い風となる報告であるといえる。

 磁化反転メカニズムの描像に関するモデルに関する報告に関しては、小林らのグループより報告されたランダウ理論で磁気的自由エネルギーを記述したシンプルなモデルによる保磁力の解釈の試みが興味深い。熱消磁状態から着磁状態への遷移が完了した後に、多軸状態が消磁状態として安定かどうかが高保磁力磁石を得るうえでの一つの指標となり得ることを提案していた。その他、ネール研Givordらの反磁界に関わる考察や、NIMSのGopalan、マックスプランクのKronmullerらの2-17系Sm-Co磁石における保磁力発現メカニズムの解析など、磁石の組織だけでなく磁気的な側面から保磁力原理を追及することも精力的に行われていた。これらの原理追求は永久磁石の更なる高性能化の可能性追求に欠くことのできない取り組みであると感じた。

(日立金属(株) 広沢 哲)

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