64.04

分野:
磁性材料
タイトル:
L10型FeNi規則合金に起因した鉄隕石の新しい磁区構造
出典:
“Novel Magnetic Domain Structure in Iron Meteorite Induced by the Presence of L10-FeNi”
Masato Kotsugi, Chiharu Mitsumata, Hiroshi Maruyama, Takanori Wakita, Toshiyuki Taniuchi, Kanta Ono, Motohiro Suzuki, Naomi Kawamura, Naoki Ishimatsu, Masaharu Oshima, Yoshio Watanabe, and Masaki Taniguchi
Appl. Phys. Express 3 (2010) 013001
 
 
概要:
 SPring-8の小嗣らは、鉄隕石(隕鉄)における微細金属組織と磁気特性の相関について、材料科学の立場から物性の評価を行った。光電子顕微鏡で観測された磁区構造はL10-FeNiに起因することが示唆された。本相はレアメタルフリーのL10型強磁性材料として、今後、磁気記録媒体等への応用の可能性が期待される。
 
 
本文:
  FeとNiを主成分とする鉄隕石は、ウィドマンステッテン構造と呼ばれる特徴的な微細金属組織を示し、地球上のFeNi合金とは大きく異なる磁気ヒステリシスや磁気異方性を示すことが知られている。研究チームは、鉄隕石を金属磁性材料の一種と位置付けて、その磁気特性の起源を金属組織と関連づけて調査した。放射光と光電子顕微鏡(PEEM)を組み合わせたナノスケール解析を行った結果、α/γ界面の近傍において、互いに正対する「head-on」型の磁区構造が確認された。本構造は静磁エネルギーの損失が極めて大きく、通常のFeNi合金では期待できない磁区構造であったが、マイクロマグネティックスシミュレーションを用いて検証した結果、界面に偏析したL10型FeNi規則合金(tetrataenite)に起源する磁区構造であることが示唆された。L10-FeNiはレアメタルフリーで極めて高い磁気異方性を示すことから、環境負荷の少ないL10型強磁性材料として今後期待される。

(群馬大 櫻井 浩)

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