27.06

分野:
ソフト磁性材料、薄膜・微粒子
出典:
International Conference on Magnetism(ICM2006)報告-”Granular, soft magnetic materials, ferrites and garnets”より-
タイトル:
中国産希土類原料高騰の事情と世界第2位の希土類資源を有するロシアの実状
概要:
 2006年8月20日~25日、International Conference on Magnetism(ICM2006)が国立京都国際会館を会場として開催された。国内外から多数の磁性関連の研究者が集いかなりの数の研究発表が行われ、活発な議論がなされた。今回は「軟磁性グラニュラー薄膜」関連のセッション”Granular, soft magnetic materials, ferrites and garnets”より、その概要をまとめたものである。
本文:
 International Conference on Magnetism(ICM2006)(2006年8月20日~25日)が国立京都国際会館を会場として開催された。今回は73のオーラルセッションと50のポスターセッションが磁気物理から応用に至る巾広い分野において開かれた。国内外から多数の磁性関連の研究者の参加があり、活発な議論が行われた。本稿では「軟磁性グラニュラー薄膜」関連のセッション”Granular, soft magnetic materials, ferrites and garnets”より、その概要を報告したい。

 1件目は電気磁気材料研究所の大沼氏により”Metal-Insulator Type Nano-Granular Soft Magnetic Thin Films -Investigations on Mechanism and Applications-“と題して招待講演が行われた。これまでに研究されてきたグラニュラー構造を持つ薄膜軟磁性材料に関して総括的な内容が話された。近年、軟磁性材料のトレンドとしては1GHz以上の共鳴周波数(fr)を有し、初透磁率(μ’)が10以上の軟磁性材料をより薄い膜で得ることが挙げられる。これを実現するためには高い抵抗率、大きな飽和磁化および大きな異方性磁界を持つことが必要であることがシミュレーションの結果より導き出された。これを実現する材料としてはCoPd-SiO系のグラニュラー薄膜があることが示され、240 Oeの異方性磁界と15000μΩcmの高抵抗率を有することが紹介された。また、Co系の合金膜にPdを添加することで軟磁性化し、異方性磁界と電気抵抗率を高める効果があることが報告された。グラニュラー薄膜にの保磁力が小さい理由については、まだ議論の余地があるとしながらも、ブリルアン散乱による測定結果から磁性粒子間の交換結合によるものであろうことが示された。さらに、グラニュラー薄膜における異方性磁界の増大はサブナノメートルスケールの磁性粒子間の結合の度合いによるらしいことが示された。

 2件目は”The Role of The Interface on The Magnetic Behavior of Granular Fe37Ag63 Film”と題してUniv. of Pais VascoのM.L. Fdez-Gubieda氏により報告があった。Agマトリクス中に分散させたFe粒子は、その体積率の大小によって超常磁性的な振る舞いからスピングラスのような振る舞いまで変化する。今回は比較的Feの体積率が大きなグラニュラー薄膜において、その交換結合はどのようにして生じるのかを検討した結果が報告された。結論として、この系のグラニュラー薄膜ではAgマトリクスとFe粒子の間に不規則構造を持つFeAgの中間層が存在することでFe粒子の磁化状態により交換結合の有無が生じるとしている。

 3件目は、”Magnetic Properties of BaFe12O19 Prepared by The Ionic Coordination Technique”と題してUFPE(Univ. Federal de Pernambuco)のF. L. A. Machado氏により報告があった。Ionic Coordination(ICR) Techniqueとはクエン酸法の一種であるが、反応溶液中にキトサンを加えることで粒径を制御できるとのことである。実際に合成されたバリウムフェライト微粒子は粒径が35~55nmでありBaFe12O19単一相からなる単磁区粒子であることが示された。

 4件目は、”Magnetic Properties and Microstructure of FePt-M-B (M=Zr,Nb,La) Films”と題して秋田県立大学の奥村氏から、主としてr.f.マグネトロンスパッタ法により作製したFePt-Zr-B系薄膜の磁気特性について報告があった。1.5-3at.%Zr, 5-9at.%Bを添加したFePt薄膜を650℃で30分間アニールすることにより粒子サイズ10~20nmのL10規則相を有するグラニュラー薄膜が形成された。特に3at.%Zr, 7.3at.%Bの組成において大きな保磁力が得られ、その値は約6kOeであったことが報告された。

(埼玉大 柿崎 浩一)

磁性材料

前の記事

27.03
スピントロニクス

次の記事

114.01