14.03(IEEE Trans. Magn. 41, 2043 (2005); ibid 41, 2053 (2005))

タイトル:
Co-Fe/自然酸化多層構造からなるソフト磁性材料
概要:
 California大のグループは,高い飽和磁束密度,透磁率,電気抵抗を有する高周波用ソフト磁性材料の合成を目指し,Co-Fe/自然酸化多層構造について研究を進めてきた.その総合報告がIEEE Trans. Magn.誌に掲載された.
本文:
 磁気デバイスの小型化,高周波化に伴い,高い飽和磁束密度,透磁率,電気抵抗を有する磁性材料が求められている.そうした要求に応えるために,これまでに磁性金属/非磁性絶縁体多層膜,ナノクリスタル,ナノグラニュラーなど様々な材料が検討されてきた.こうした流れの中で,カリフォルニア大Berkowitzのグループは,5年ほど前よりCo-Fe/自然酸化多層膜(MNOM:metal/native-oxide multilayers) の研究に取り組み,それが有望な高周波用ソフト磁性材料になりうる可能性を指摘してきた.それら一連の成果が,総合報告の形でIEEE Trans. Magn. 誌2005年6月号に掲載された.
MNOMは,数nm程度のCo-Fe層を磁場中成膜後に酸素雰囲気中で表面を自然酸化させ,この操作を単純に繰り返して形成された金属/自然酸化多層膜である.磁場中成膜,引き続き自然酸化という簡単なプロセスにより,極めて分散の少ない一軸磁気異方性を誘起でき,その大きさをCo-Fe組成の調整により最大~250 Oeの範囲で任意に制御できる.(この誘導異方性は酸化層内のCo2+イオン の1イオン異方性モデルでよく説明できるとのこと) しかも,強磁性界面での近接効果によりFeO組成を有する酸化層は強磁性を示すようになるため,酸化に伴う磁化の低下が大幅に軽減され,更に酸化層を介した強磁性金属層間の交換結合が保たれる.
  Co-Fe MNOMが上述のように優れた軟磁性を示すキーポイントのひとつは,強磁性金属/表面酸化層界面の近接効果により酸化層が強磁性を示す点にある.この近接効果の問題は,ナノグラニュラー系の磁気的挙動を理解する上でも重要と考えられ,今後より掘り下げた研究の進展が予想される.

(東北大学 北上 修)