12.06

(Intermag Asia 2005、April 4-8, Nagoya, Japan モータ技術展、2005年4月20 – 22日、幕張メッセ)

タイトル:
小型Nd-Fe-B焼結磁石の高性能化、異方性希土類ボンド磁石の新規用途への応用など、永久磁石材料の高性能化と市場拡大に関する発表が相次ぐ
概要:
 Intermag Asia 2005では、現在、種々の工業製品に利用されている小型Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力増大の新しい技術トレンドの発表が相次いだ。また、異方性希土類ボンド磁石の大きな市場形成を狙い、異方性希土類ボンド磁石の新規用途への応用製品(モータ技術展)、極薄肉リング磁石の製法の発表(Intermag Asia 2005)も行われた。永久磁石材料のさらなる高性能化と市場拡大に期待が持たれている。
本文:
 小型Nd-Fe-B焼結磁石の高性能化、異方性希土類ボンド磁石の新規用途への応用など、永久磁石材料の高性能化と市場拡大に関する発表が相次いで発表されている。
 焼結Nd-Fe-B磁石は、現在最高性能の磁石材料として磁気ハードディスクの磁気ヘッドアクチュエータや携帯電話の着信通知用振動モータなどに大量に使用されており、今後は自動車用駆動モータやパワーステアリング用制御モータなどへの用途拡大が期待されている。現在、保磁力を実用レベルに調整するためにはDyなど重希土類元素を合金化して結晶磁気異方性を高める手法が取られているが、反強磁性的結合のため磁化が低下するという欠点がある。2005年4月4 – 8日に名古屋で開催されたIntermag Asia 2005において、この小型Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力増大の新しいトレンドに関する発表が相次いだ。大阪大学先端科学イノベーションセンタと並木精密宝石(株)の共同発表では、焼結Nd-Fe-B系磁石に金属DyまたはTbをスパッタ蒸着し、拡散熱処理する方法が発表された。また、信越化学工業(株)はこれとは独立に、重希土類金属化合物を塗布した後に、熱処理により表面から磁石内部の結晶粒界に拡散させる手法を発表した。現状では固相拡散を利用するプロセスのため小型磁石に限られるようだが,磁化の低下をそれほど招かずに保磁力を向上させることができるとの発表であり、今後の展開に期待が持たれる。
 一方、異方性希土類ボンド磁石はNd-Fe-B系とSm-Fe-N系が開発されているが、これまでのところ大きな市場形成につながっていない。この現状に変化をもたらそうとする発表がいくつかあり、今後の動向が注目される。2005年4月20 – 22日に幕張メッセで開催されたモータ技術展では、愛知製鋼(株)がHDDRプロセスで作製したNd-Fe-B系異方性ボンド磁石と電動工具などの応用製品と成形技術を展示し、また、(株)NEOMAXのブースではHDDR磁粉と鉄粉とを二色成形で一体化したモータ用回転子が展示され、いずれも来場者の関心を集めた。また、2005年4月4 – 8日に名古屋で開催されたIntermag Asia 2005では、住友金属鉱山(株)により、Sm-Fe-N系磁粉と熱硬化性樹脂を用いた射出成形異方性ボンド磁石の極薄肉リング磁石の製法が発表されている。

(株式会社NEOMAX 広沢 哲)

磁性材料

前の記事

13.06
磁性材料

次の記事

03.07