103.02

分野:
磁気記録
タイトル:
第24回IEEE磁気記録国際会議(TMRC 2013)報告(その2)
-複数の磁気抵抗素子を用いた磁気再生方式-
出典:
Digest of the 24th Magnetic Recording Conference (TMRC 2013)
 
 
概要:
 2013年8月20日~22日に東京工業大学 大岡山キャンパスで開催されたTMRC 2013は, 1Tbit/inch2 を超える面記録密度を達成可能な次世代磁気記録技術36件の招待講演を中心とした国際会議である。 TMRC2013では,二次元磁気記録(TDMR : Two-Dimensional Magnetic Recording)やシングル磁気記録(SMR : Shingled Magnetic Recording)の信号処理関連技術, 特に複数の磁気抵抗素子を用いた再生方式の発表に注目が集まった。
 
 
本文:
 G. Mathew氏らの研究グループ(講演番号 D4)は, シングル磁気記録において3個の磁気抵抗素子を有する再生ヘッドと二次元結合等価器を用いることで, 再生オフセット量(再生ヘッドが対象トラック中央からクロストラック方向にずれた量)を大きくできることを示した。
 シングル磁気記録は幅の広いヘッドで書いた情報トラックに部分的にトラックが重なるように次々と重ね書きするため, トラック間にガードバンドを有していない。そのため, 再生ヘッドが対象トラック中央から外れると隣接トラックからの波形干渉の影響が大きくなることが問題となっている。これを解決するために, 3つの磁気抵抗素子を対象トラック中央と対象トラック中央からクロストラック方向に±30%ずつ離した位置に配置した再生ヘッドの構造が提案されている。
 記録ヘッドの幅の20%分重ね書きをしたSMR記録再生系において, 提案の3素子の再生ヘッドからの再生波形を用いて二次元結合等価器で波形等化し, 雑音予測機能を備えたViterbi復号器で復号すると, ビット誤り率10-2を達成できる再生オフセット量が1素子の再生ヘッドの場合の約6.5倍広くなることが示されている。
 E. M. Rachid氏らの研究グループ(講演番号 D5)は, 2または3個の磁気抵抗素子を有する再生ヘッドの再生素子の配置や大きさを変えた時の, 計算機シミュレーションによるビット誤り率特性が示されている。その結果, 2または3個の素子を有する再生ヘッドを用いた場合, 1素子の再生ヘッドの場合に比べ良い特性となることが示されている。
 今回のTMRC2013では, 上記の講演だけでなく, 二次元磁気記録やシングル磁気記録の信号処理関連の発表に注目が集まっていた。いよいよ二次元気記録のための信号処理の検討が本格化してきたものと思われる。

(愛媛大学 仲村泰明)

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