32.01

分野:
磁気記録
タイトル:
FePtナノ粒子の新しい熱処理法
出典:
Advanced Materials 18, 2984 (2006)
 
概要:
 Texas大学の研究者等は,化学合成FePtナノ粒子をNaCl粉体中で熱処理することにより,凝集・焼結を抑えたシャープな粒径分布を有するL10 FePt試料を作製し,結晶相及び磁気特性に及ぼす粒子サイズの影響を調べた.
本文:
 化学的手法によればシャープな粒径分布のFePtナノ粒子を得ることができる.しかし,これらの粒子を熱処理により不規則構造(fcc)から規則構造(L10)に変態させる際,粒子同士の凝集・焼結が生じ,粒径分布は著しく拡がる.この問題を避ける方法として,これまでに凝集防止用有機物添加[ Jpn. J. Appl. Phys. 42, L1252 (2006)]やSiO2ナノリアクター法[ Appl. Phys. Lett. 87, 032503 (2005)]などが提案されてきた.

 一方,これらとは別に,Texas大のグループは,非常に単純な発想に基づく凝集防止法のFePtナノ粒子への適用を試みた.[ J. Phys. D; Appl. Phys. 38, 2306 (2005); J. Appl. Phys. 99, 08E911 (2006) ].この方法では,NaCl粉末中でFePt粒子を熱処理することにより,凝縮・焼結を防止する.単純な方法であるにもかかわらず,粒径分布は熱処理前後で殆ど変化しないことが確認されている.こうした均質粒径のL10 FePtナノ試料を用いて,結晶相及び磁気特性に及ぼす粒子サイズの影響を調べている.

 前者については,従来の薄膜の結果[J. Appl. Phys. 93, 7166 (2003); Phys. Rev. B 72, 144419 (2005)]と同様に,2 nm以下ではL10相に変態しないことを確認している.また,磁気特性については,キュリー温度の規則度および粒径依存性を調べ,それが有限サイズ効果により説明できるとしている.今回のナノ粒子焼結防止法は,FePtに限らず他の材料系にも応用できる可能性がある.

(東北大 北上 修)

磁気記録

前の記事

35.04
磁気記録

次の記事

32.03