22.04

分野:
磁気記録
出典:
http://www.toyoag.co.jp/ieice/G_top/g_top.html
 
タイトル:
2006年電子情報通信学会総合大会(2006/3/24-27)
概要:
 2006年電子情報通信学会総合大会が,同年3月24-27日に国士舘大学世田谷キャンパスにて開催された.同27日には,「高密度垂直磁気記録方式に資する先端磁性薄膜材料開発」と銘打たれたシンポジウムセッションが設けられ,媒体開発の基礎的成果から新規の磁気特性評価法まで幅広い話題が提供された.
本文:
 2006年電子情報通信学会総合大会では,同学会磁気記録研究専門委員会との共催で「高密度垂直磁気記録方式に資する先端磁性薄膜材料開発」と銘打たれたシンポジウムセッションが設けられた.このセッションの前半には,現在の垂直磁気記録媒体の主流を成すCoPtCr-SiO2グラニュラー媒体に関する3件の講演があり,磁気特性あるいは記録再生特性に及ぼす周辺温度の影響や摺動型単磁極ヘッドによる記録再生試験についての結果等が発表された.

 秋田県産業技術総合研究センター高度技術研究所の木谷ら(CS-7-2「摺動型垂直磁気記録ヘッドによるグラニュラー媒体の記録特性」)は,記録層の成長初期領域のみを高Arガス圧力にてスパッタ成膜することで,磁性粒子の分離が促進され,転移ジッタ量の減少に伴いSN比が向上することを報告した.低浮上量の極限とも云える摺動型単磁極ヘッドを用いたこの系では,現状で200 Gbpsiに迫る面記録密度を達成する可能性のあることが示された.

 後半には4件の講演があり,電気化学的手法を用いた軟磁性裏打ち層および中間層の形成,高飽和磁束密度Fe-Co系合金膜の軟磁性裏打ち層への適用,良好な結晶配向性を示すFePt規則合金媒体の作製,ホール効果を利用した二層媒体の磁気的相互作用評価,X線磁気円二色性吸収分光による元素別磁気ヒステリシス測定,等の非常に多岐に亘るトピックスが紹介された.

 早稲田大学の木村ら(CS-7-4「無電解Pd/CoNiFeB下地層を用いたCo/Pd多層膜媒体の作製」)は,無電解めっき法により作製されたスパイクノイズフリーなCoNiFeB軟磁性裏打ち層の表面にnmオーダー径のPd金属核を置換析出させ,これがCo/Pd多層膜媒体の中間層として効果的に機能することを報告した.即ち,軟磁性裏打ち層から中間層までを一括に電気化学的手法で形成するプロセスを提案し,電気化学的手法が垂直磁気記録媒体の作製法として有望な選択肢の1つであることを示した. 

(早稲田大学 佐山淳一)

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