68.04

分野:
磁気物理
タイトル:
第36回化合物新磁性材料専門研究会「熱電材料と場の理論」
概要:
2010/2/24東京大学物性研究所にて開催、参加者は60名であった。本研究会では、軌道自由度のある系、準結晶、量子スピンホール系、薄膜、籠状物質という多岐に亘る物質系を対象とした熱電現象に関して、実験、理論の両者の観点から議論がなされた。通常の研究会では一同に会することの少ない講演者が揃ったこともあり、全国からいらした多数の聴衆に恵まれ、活発な討論がなされた。この研究会を契機に新たな分野間交流が広がり、新規な高性能熱電材料の開発に繋がることを期待する。
 
本文:
 

  • 「強相関電子系の熱電応答」 小椎八重 航(理研)
    熱電応答の基礎理論について包括的なレビューがなされた。強相関電子系ではスピンと軌道の自由度が顕に熱電応答に顔を出すことが紹介され、計算結果が酸化物に対する実験結果と比較された。

  • 「ペロブスカイト型ロジウム酸化物LaRhO3の熱電特性」 芝崎 聡一郎(早大)
    軌道自由度を有するCo及びRhを含む酸化物は、高い熱電特性を示す事が紹介された。特に、Rh系が室温以上で良い熱電応答を示すことが報告され、低スピン状態の安定性の観点から議論された。

  • 「クラスレート化合物Ba8Ga16Sn30及び置換系の熱電物性」 才賀 裕太(広大)
    キャリア密度を精密に制御することで、性能指数が1を超えるクラスレート化合物を創製したとの報告がなされた。巨大応答の起源として、籠中のゲスト原子の非調和振動に由来する熱伝導率の低下が議論された。

  • 「酸化物の熱電現象」 太田 裕道(名大)
    酸化物バルクの性能指数は、大きな熱伝導率に律速されていることが明らかにされた。ヘテロ構造作製や電界効果利用を通じて系を2次元化することが、熱電特性向上のために有効であることが紹介された。

  • 「2次元量子スピンホール系における熱電輸送」  高橋 隆志(東工大)
    ナノリボン状の量子スピンホール系における熱電応答の理論が紹介された。降温に従いバルクからエッジが優勢になるクロスオーバー現象が見られ、低温領域で性能指数が向上する可能性があると議論された。

  • 「アルミ系準結晶及び派生結晶の熱電物性」 高際 良樹(東大)
    陽電子消滅法が化学結合を評価する有効な手法であることが紹介され、得られた結合性に基づき材料設計を行った結果、性能指数が0.26に達する準結晶を見出したことが報告された。

 
 

(東大 大串研也)

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