56.03

分野:
磁気物理
タイトル:
第30回化合物新磁性材料専門研究会「圧力によって誘起される新しい磁性と高圧研究の現状」
概要:
 2008/10/30青山学院大学青山キャンパスにて開催、参加者は19名であった。近年、圧力誘起の超伝導や金属絶縁体転移、スピン液体、誘電分極の反転など多くの新奇な圧力誘起相転移が発見され、外場としての圧力に注目が集っている。今回の研究会では、講演者の方々に、高圧下実験の現状、および圧力誘起物性の最近の成果を紹介して頂き、圧力誘起新奇物性から、実験技術の詳細にわたって活発な議論がなされた。
本文:
 

  1. 「極低温における高圧下物性測定装置の開発」 松林和幸(東大)
    高圧下における物性研究の測定手法として、小型キュービックアンビルセルと高圧下比熱測定装置の開発状況について報告があった。また、その研究例としてYb系重い電子系物質における圧力誘起相転移の実験結果が示され,これに関して議論があった。
  2. 「10 GPa級単結晶中性子磁気回折を目指した高圧力技術の開発とその応用」 長壁豊隆(原子力機構)
    10 GPa下での単結晶中性子磁気回折実験を目指した、(1)サファイアとWCを組み合わせたハイブリッドアンビル技術の開発、(2)グリセリン静水圧媒体の探索、(3)中性子集光デバイスの開発がどのように行われているか報告がなされた。
  3. 「スピネル化合物における交換相互作用の圧力制御」 植田浩明(東大)
    近年,圧力下での磁化率測定が手軽になってきている一例として,この講演では2 GPaまでの圧力で磁化率を高感度で測定できる手法について紹介された.またそれを用いた測定例として,スピネル化合物などを中心とした結果が示された.
  4. 「Ruパイロクロアにおける圧力誘起金属絶縁体転移の制御と出現」 山本文子(理研)
    フラストレーションを有するパイロクロアA2Ru2O7(A=Hg,Tl)の金属絶縁体転移において、高圧下での電気抵抗測定を行った結果が報告された。A=Hgの場合、金属絶縁体転移温度は加圧により低下し、6 GPa以上では金属となること,一方、A=Tlでは2 GPaまでは、金属絶縁体転移温度が低下するが、これ以上では、抵抗率の増大を示す新たな相が出現することが報告された。
  5. 「高圧下のμSR研究の現状」 髭本亘(原子力機構)
    高圧下のμSR実験の現状について報告があった。高圧下のμSR実験はここ数年拡がりを見せ、多くの研究がなされてきている。最近の例として重い電子系や有機物等の高圧下のμSR実験を紹介すると共に、今後の展望が述べられた。

(物質材料研究機構 寺田典樹)

スピントロニクス

前の記事

117.02
磁気物理

次の記事

56.04