224.02

224.02
【分野】磁気記録

【タイトル】MTJ素子の劣化に対する界面層欠陥の影響予測モデル

【出典】
[1] キオクシア 先端技術トピックス(2024年)
https://www.kioxia.com/ja-jp/rd/technology/topics/topics-69.html
[2] R. Takashima, et al., “Microscopic Modeling of MgO Barrier Degradation Due to Interface Oxygen Frenkel Defects in Scaled MTJ Toward High-Density STT-MRAM” in 2024 IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS) P10.EM-1 – P10.EM-5,
DOI: 10.1109/IRPS48228.2024.10529458

【概要】
キオクシアのTakashima らは、MTJ素子の信頼性劣化に対して、第一原理計算と数値モデルを用いた見積もりから、磁性層/バリア層界面の酸素フレンケル欠陥が重要な役割を果たすことを見出した。また、初期状態における界面の酸素欠損濃度と劣化の関係の予測を示した。

【本文】
キオクシアのTakashima らは、2024 IRPSにおいて、第一原理計算と数値モデルを用いた見積もりから、MTJ素子の信頼性劣化に対するバリア界面の酸素欠陥によるモデルを提案した。[1,2] MRAMは大容量で高速な不揮発メモリとして期待されている。大容量メモリとして用いる場合、MTJ素子の微細化開発は不可欠である。書き込み電流を確保しながら微細化するためには、トンネルバリアの薄膜化が求められるが、バリア薄膜化は一般に信頼性の劣化を招くため、バリア劣化のメカニズムを明らかにすることは非常に重要である。
筆者らは、素子にストレスを印加した際に見られる少数の不良素子について、抵抗が徐々に増加し、TMRが減少するモードに着目し、モデリングを行った。
筆者らはまず、第一原理計算を用いて、複数の欠陥についてそれぞれがMTJの電気抵抗(RA,TMR)に与える影響を求め、ストレス下での抵抗上昇が磁性層/バリア層界面の酸素フレンケル欠陥で説明できることを示した。
更に、欠陥生成エネルギーを用いて、素子内の欠陥生成領域の時間発展のモデルを導入し、RA,TMRの時間発展の見積もりを行った。このモデルに従うと、初期状態における界面の酸素欠損(成膜時に発生する欠陥)が多いほど特性が劣化することを示した。
この報告は、特に信頼性の改善が求められる高密度MRAM において、重要な知見を与えるものである。
(キオクシア 板井翔吾)

磁気応用

前の記事

224.01