224.01

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【分野】磁気応用

【タイトル】MR磁気センサアレイにより通常環境下における心磁界計測を実証

【出典】
・TDK株式会社(2024年プレスリリース)
https://www.tdk.com/ja/news_center/press/20240829_01.html
・国立大学法人 東京医科歯科大学(2024年プレスリリース)
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20240829-1/

【概要】
TDK株式会社と東京医科歯科大学・笹野教授らの研究グループは、MRセンサを用いた座位型の心磁計を開発し、磁気シールドルームのない通常の検査室において心磁計測を実施し、心電波形とほぼ同等のレベルの心磁波形を測定することに成功したと発表した。

【本文】
心臓の電気的活動にともなって体表面上に発生する磁気信号を計測する心磁図計測には長らく超伝導磁気センサ(SQUIDセンサ)が用いられてきたが、液体ヘリウムによる冷却が必要であることが障壁の一つとなり、普及には至っていなかった。
TDK株式会社は冷却を必要としない磁気抵抗素子を用いたMR(Magneto Resistive: 磁気抵抗)センサを利用した心磁計システムを開発した。Fig. 1に示すように座椅子の背もたれ部分にMRセンサが42個配置されており、被験者の背中側からでも胸側からでも心磁図計測が可能となっている。また、病院内の通常の検査室のような磁気シールドルームのない環境での検査が目標とされている。計測データから環境磁気ノイズや振動などのノイズを除去するための信号処理アルゴリズムが搭載され、磁気シールドルームレスでクリアな心磁波形が得られるようになった。
今回、開発された心磁計システムが東京医科歯科大学病院内科外来の通常の検査室に設置され、健常者40名、心房細動患者10名を対象とした心磁図計測実験が実施された。加算平均処理されたデータでは心電図と同レベルの信号/雑音比が得られること、非加算平均データでは99.9 % の精度で心拍を検出できることが確認された。通常の環境下におけるMRセンサアレイを用いた心磁計測は世界初である(2024年8月現在、TDK社調べ)。
今後はMRセンサの感度を更に改善し、各種心疾患の検出のための研究を進め、医療機器メーカーを通じて実用化を目指すとのことである。
(金沢工業大学 小山大介)

Fig.1 MR-sensor based MCG system installed under an unshielded condition in a hospital
(Photo: provided by TDK. Corp.)

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