223.01
223.01
【分野】磁気応用
【タイトル】磁気光学効果を利用した光プローブ電流センサ
【出典】
(1) シチズンファインデバイス株式会社ホームページ (2024年4月)
https://cfd.citizen.co.jp/opecs/
(2) 岩崎通信機株式会社ホームページ (2024年4月)
https://www.iwatsu.co.jp/tme/opecs/
(3)曽根原 誠,後藤 貴登,佐藤 敏郎,小川 圭介,山沢 清人,三浦 義正,浅沼 和志;「Fe/Mn-Ir交換結合単磁区磁性薄膜の磁気Kerr効果を用いた光信号式歪センサの基礎検討」,Journal of the Magnetics Society of Japan, 34, 593(2010).
(4) Keisuke Ogawa, Shin Suzuki, Makoto Sonehara, Toshiro Sato, Kazushi Asanuma; “Optical Probe Current Sensor Module using the Kerr Effect of Exchange-coupled Magnetic Film and its Application to IGBT Switching Current Measurements”, International Journal on Smart Sensing and Intelligent Systems, 5, 347(2012).
(5)宮本 光教,須江 聡,久保 利哉,曽根原 誠,佐藤 敏郎;「等方性Co-MgF2グラニュラー膜の磁気光学特性と光プローブ電流センサへの適用」,Transaction of Magnetics Society of Japan, 7, 22(2023).
【概要】
磁気光学効果であるFaraday効果を利用した光プローブ式電流(磁界)センサが2024年4月に市販された。Faraday効果を有した磁性膜を光ファイバの先端に接合することができたため、局所的な電流(磁界)計測が可能となった。また直流から150 MHzまでの交流まで広帯域に測定可能で、かつ低侵襲性、絶縁性、耐電磁ノイズなどの特長を有していて、例えばパワーデバイスのワイヤボンディングに流れる電流波形を観測できるなど、特に電源システムの開発現場で有用である。
【本文】
光プローブ式電流(磁界)センサは、2005年頃から信州大学工学部先端磁気デバイス研究室で基礎研究が始まり、シチズンファインデバイス(株)や(公財)電磁材料研究所などとの共同研究を経て、2024年4月より岩崎通信機(株)より「OpECS®」(Fig. 1) として市販された(出典(1),(2))。
本センサの測定原理は、磁気光学効果を有する磁性膜に直線偏光を入射させ、磁性膜に(電流)磁界が印加されなければ透過光(系によっては反射光)は直線偏光のまま、一方で磁性膜に磁界が印加されれば透過光がその強度に伴い楕円率が大きくなる楕円偏光となり、それをプリズムビームスプリッタでP波とS波に分光し、それぞれをフォトダイオードで受光し、差動を取ることでセンサ出力とするものである。センサの世代によって、リング干渉方式を導入するなどの差異はあり、詳細なセンサの構成や測定原理については、出典(3)~(5)などを参考にされたい。開発当初は、暗室内で約1 m2の空間伝搬光による光学システムを組み(Fig. 2)、それを数cmサイズのセンサモジュール(Fig. 3)とし、更なる小型のため、Faraday効果を有する磁性膜を光ファイバの先端に接合することに成功し、現在のOpECS®のシステムに至る。
本センサによる電流測定の事例として、パワーデバイスのワイヤボンディングに流れる電流波形の測定結果をFig. 4に示す。本センサの特長の一つである局所計測により、約700 umの狭ピッチかつ約300 umのワイヤに流れる電流波形を同図のように測定することででき、⑤の実装不良を明らかにすることができた。他にもスイッチング電源のチョークコイルに流れる電流の測定や、GaNボードを用いた他のセンサとの低侵襲性の比較について出典(1)で紹介している。
現在も高感度化のための小型集磁ヨークや、高S/N比のためのツインセンサヘッドなどの研究開発を進めており、その成果を第48回日本磁気学会学術講演会などで発表予定である。
(信州大学 曽根原 誠)