211.01

【分野】
磁性材料

【タイトル】
磁場で動く低温用形状記憶合金を開発
-磁歪材料やアクチュエーターのエネルギーロスを約1/100に!-

【出典】
・東北大学ホームページ(2023年プレスリリース)
URL:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/06/press20230613-03-pd.html
・Tatsuya Ito, Xiao Xu, Atsushi Miyake, Yuto Kinoshita, Makoto Nagasako, Kohki Takahashi,
Toshihiro Omori, Masashi Tokunaga, Ryosuke Kainuma
“Pd2MnGa Metamagnetic Shape Memory Alloy with Small Energy Loss”,
Advanced Science Early View 12 June 2023
DOI:10.1002/advs.202207779
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202207779

【概要】
 東北大学大学院工学研究科博士後期課程の伊東達也氏(研究当時)と許皛助教らの研究グループは、東京大学との共同研究により、磁場駆動可能な形状記憶合金においてエネルギーロスを従来の約1/100に低減させた新規Pd系合金の開発に成功した。本合金は低温において2500 ppm以上の巨大磁歪を示し、今後の水素社会において、極低温環境でのアクチュエーターや磁歪材料への応用が期待される。

【本文】
 形状記憶合金は変形後の加熱によって元の形に戻る特性を活かし、センサーやアクチュエーターに応用されている。しかし、温度変化による形状記憶効果は伝熱の遅さに起因する応答の遅れから動作周波数が数Hz以下となるといった制約がある。本研究グループでは2006年に世界に先駆けて磁場で形状記憶効果が得られるNiCoMnIn系合金を開発し、100 Hzを超える動作周波数を実現した。しかし、これらの合金は動作過程で大きなエネルギーロス(室温で約10 J/mol、低温になると20 J/mol以上となる)が生じるため、技術的な課題となっていた。
 本研究で開発されたPd2MnGa合金は磁場に応答して相変態が生じるが、磁場の励磁・消磁過程においてのエネルギーロスが極めて小さく、110~120 Kの温度範囲において最小で0.3 J/mol以下となることが分かった。これは従来合金と比較して約1/100程度の値であり省エネルギーな磁場駆動型形状記憶合金であると言える。また、本合金は100 K程度の低温において2500 ppm以上の巨大磁歪を示し、これは希土類磁歪材料Terfenol-Dに匹敵する大きさであり、今後の水素社会における液体水素の運搬や制御等に必要な100 K以下の極低温領域で使用可能なアクチュエーターや磁歪材料への応用が期待される。

(大同特殊鋼 梶並佳朋)

(a)開発したPd系形状記憶合金と従来合金との磁場駆動でのエネルギーロスの比較
(b)開発したPd系単結晶合金における低温の磁歪特性

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