205.01

【分野】磁気物理

【タイトル】最先端の永久磁石材料内部の微小磁石の振舞いを3次元で透視 超高性能磁石開発に向けた保磁力メカニズム解明に一歩前進

【出典】
・M. Takeuchi, M. Suzuki, S. Kobayashi, Y. Kotani, T. Nakamura, N. Kikuchi, A. Bolyachkin, H. Sepehri-Amin, T. Ohkubo, K. Hono, Y. Une,and S. Okamoto, “Real picture of magnetic domain dynamics along magnetic hysteresis inside an advanced permanent magnet”, NPG Asia Materials (2022) 14:70
DOI:10.1038/s41427-022-00417-0
・東北大学 2022年 | プレスリリース・研究成果 2022年08月23日
URL:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/08/press20220823-01-magnet.html
・関西学院大学 共同発表 2022年8月23日
URL:https://www.kwansei.ac.jp/news/detail/4695
・高輝度光科学研究センター プレスリリース 2022年8月23日
URL:http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2022/220823/
・大同特殊鋼株式会社 プレスリリース 2022年8月23日
URL: https://www.daido.co.jp/about/release/2022/220823_research.html

【概要】東北大学多元物質科学研究所、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター、関西学院大学、高輝度光科学研究センター、物質・材料研究機構、大同特殊鋼株式会社からなる研究チームは、大型放射光施設SPring-8で開発された硬X線磁気トモグラフィー(磁気CT)法を用いることで、高い保磁力を有するNdFeB系永久磁石の磁気ヒステリシスに対応する磁石内部の磁区構造の変化を3次元で可視化することに成功した。

【本文】100年以上前から、永久磁石のヒステリシス特性を解明するために3次元の磁区構造解明が求められてきたが、いまだに未解決の問題である。その理由は、従来の磁区観察手法は磁石表面の磁区構造しか観測することができず、磁石表面の欠陥層等の影響を強く受けるからである。しかしながら、最近、東北大学多元物質科学研究所岡本聡 教授、関西学院大学鈴木基寛 教授らの研究グループは、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター、高輝度光科学研究センター、物質・材料研究機構、大同特殊鋼株式会社と共同で、大型放射光施設SPring-8で開発された硬X線磁気トモグラフィー(磁気CT)法を用いることで、高い保磁力を有するNdFeB系永久磁石の磁気ヒステリシスに対応する磁石内部の磁区構造の変化を3次元で可視化することに成功した(Fig. 1)。さらに、収束イオンビームを用いて表面を剥離させながら電子顕微鏡観察を行い、硬X線磁気トモグラフィー(磁気CT)の画像と比較し、磁区構造の変化と微細組織との対応を詳細に調べた。その結果、磁区形成の起点となる場所を特定することが出来るなど、今後の保磁力メカニズム解明につながる成果が得られ、また、磁化がゼロの状態である熱消磁状態と保磁力の状態では異なる磁区構造を有しているが、いずれも2.3 μmの特徴的な磁区サイズを有することがわかった。新しく開発された本測定手法により、様々な磁石の磁石内部の磁区構造が磁気ヒステリシスに沿ってどのように変化するのかを3次元で可視化した実験データを取得することが可能になり、超高性能磁石材料の開発への貢献やマイクロ磁気シミュレーションの計算精度の向上が期待される。
(群馬大学 櫻井浩)

Fig. 1 Experimental magnetic tomography images of a NdFeB sample at several applied magnetic fields.

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