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【分野】磁気応用

【タイトル】岩石に記録された磁気を測る

【出典】
産業総合技術研究所プレスリリース
「走査型SQUID顕微鏡による磁気イメージングの地質学への応用」
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2017/nr20170626/nr20170626.html

【概要】
産業技術総合研究所、金沢工業大学、高知大学らの研究グループは、共同で開発した走査型SQUID顕微鏡をもちいて海底のマンガンクラストに記録された磁気を計測し、0.1 mmの分解能での磁気イメージングをおこなった。その結果、マンガンクラストの成長速度の推定や試料中の磁性鉱物の成分や量が約300万年前を境に変化したことが明らかになった。

【本文】
地球が作り出す磁場である地磁気は、地球が誕生して以来何度もN極、S極の反転を繰り返してきた。磁性体を含んだ鉱物を含む岩石はその成長過程で当時の磁気情報を記録しているため、岩石が記録している磁気情報を計測することによって地磁気変動の歴史を知ることができる。その一種として主に鉄・マンガンを主体とするマンガンクラストと呼ばれる岩石がある。マンガンクラストは成長が遅いため、形成された年代を知ることによってその時代の地球環境を推定することができるとされている。
産業総合技術研究所(以下、産総研)の小田、金沢工業大学の河合らの研究グループはこれまでに、SQUID(超電導量子干渉素子:Superconducting Quantum Interference Device)磁気センサによって試料表面の磁場分布をイメージングする、走査型SQUID顕微鏡を開発していた[1,2]。この走査型SQUID顕微鏡の分解能は約1 pT/Hz1/2で±5400 nTのダイナミックレンジを持つ。センサと測定対象物の距離は最小で200 mであり、また、100 mm×100 mm の領域を 10 mの精度でスキャンすることができる。
高知大の野口、山本らは、この走査型SQUID顕微鏡をもちいて太平洋南鳥島沖で採取されたマンガンクラストの表面を0.1 mmの分解能で計測した[3]。得られた磁場分布画像と標準地球磁場逆転年代軸を比較した結果、この岩石は百万年あたり平均約3.4 mmの速度で成長していたことが分かった。
また、岩石表面の保磁力に関するイメージングもおこない、現在から300万年前を境にして高保持力の鉱物が増加していた。この理由として、約280万年からの北半球における氷床が発達した事が挙げられている。地球の寒冷化が進んで磁性体を含む土壌粒子がユーラシア大陸から風で運ばれるようになり、試料である岩石が成長した場所にて堆積したと著者らは推定している。

[1] H. Oda et al., Earth, Planets and Space (2016) 68:179
[2] J. Kawai et al., IEEE Trans. Appl. Supercond. (2016) 26, 1600905
[3] A. Noguchi et al., Geophys. Res. Lett. (2017) 44, 5360-5367

(金沢工業大学 小山大介)

マンガンクラストから得られた反転磁気イメージ
(出典:野口敦史 他、2016日本地球惑星科学連合大会)

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