109.01

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
ナノスケールの極薄磁石の向きを垂直にそろえる新機構を発見
-強力な極薄磁石による超高密度不揮発性磁気メモリ開発に道筋-
出典:
1. “Rashba Spin-Orbit Anisotropy and the Electric Field Control of Magnetism” , Scientific Reports, Volume: 4,Article number:4105, doi:10.1038/srep04105
2. 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 プレス発表
https://www.jaea.go.jp/02/press2013/p14021701/index.html
 
 
概要:
独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)先端基礎研究センターの家田淳一副主任研究員、前川禎通センター長、および米国マイアミ大学物理学科のスチュワート・バーンズ教授(先端基礎研究センター客員研究員兼任)の共同の研究グループは、極薄膜磁性層における垂直磁気異方性にラシュバ効果が大きく寄与していることを理論的に示した。垂直磁気異方性のコントロールはスピンエレクトロニクス分野での様々な応用が検討されている一方で、未だ定量的に理解できていない現象が多々ある。この研究により、それらのメカニズム解明が進むことが期待される。
 
 
本文:
JAEA先端基礎研究センターのグループは、極薄膜磁性層における強い垂直磁気異方性やその電場依存性を、ラシュバスピン軌道結合を取り込むことで理論的に説明できることを示した。本報告はNature姉妹誌のオンラインジャーナルである”Scientific Reports”に掲載されたことが、JAEAのプレス発表により報じられており、その研究概要が掲載されている。これらの発表によると、従来から主に非磁性金属や半導体で議論されてきたラシュバ効果によるスピン分裂を磁性体に適用することで強い垂直磁気異方性を説明できるとしている。磁性体の中では、交換結合によりスピン分裂が変調され、もともと面内のラシュバ効果による磁場がDzyaloshinskii-Moriya相互作用のアナロジーで垂直磁気異方性を生み出すことが示されている。プレス発表の中での説明によると、あたかもテントのポールを立てるロープが面内(地面内)に均等に引かれることでポールが垂直に立つイメージに一致すると説明している。今回の報告の中では、さらに、強磁性層が絶縁層や貴金属層と積層された場合について、強磁性層の両界面におけるラシュバ効果による磁場の大小がどのように垂直磁気異方性を増大/減少させるかについて、イラストを使って直感的に説明がなされている。従来の界面における電荷のドーピングによる解釈では理解できなかった貴金属等の界面での強い垂直磁気異方性の発現メカニズムがラシュバ効果で説明されたことで、磁性層に積層する材料の指針も示された。これにより、今後の不揮発性磁気メモリや、その他の磁性デバイスの発展につながると期待している。

(東芝 鴻井 克彦)

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