134.02

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【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】新構造磁気メモリ素子を開発

【出典】
S. Fukami, T. Anekawa, C. Zhang, and H. Ohno, “A spin-orbit torque switching scheme with collinear magnetic easy axis and current configuration”, Nature Nanotechnology, doi:10.1038/nnano2016.29.
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160317_01web.pdf.

【概要】
東北大学の深見らは、これまで知られていた2つの方式とは異なるスピン軌道トルク磁化反転による新たな磁気メモリ素子を開発し、その動作を実証したことをNature Nanotechnologyに発表した。この新たな構造を用いることにより、これまでMRAMにおいて課題とされてきた高速かつ低消費電力での動作が可能になり実用面でも非常に有意義な知見が得られている。また、スピン軌道トルク磁化反転による新たな磁気メモリ素子構造が明らかになったことで、従来の2構造を評価するだけでは解明が困難であった物理が明らかになる可能性も示唆している。

【本文】
東北大学の深見らは、これまで知られていた2つの方式とは異なるスピン軌道トルク磁化反転による新たな磁気メモリ素子を開発し、その動作を実証したことをNature Nanotechnologyに発表した。これまで知られていたスピン軌道トルク磁化反転による磁気メモリ素子構造は、スピン流を発生させる重金属チャネル層を流れる電流の方向と磁化反転層の磁化の方向が直交する関係にあったが、第3のスピン軌道トルク磁化反転素子の構造は、電流と磁化の向きが平行方向となる新構造である。これまで知られていた構造では、特に高速の磁化反転を行う場合には重金属チャネル層を流れる電流が著しく大きくなってしまい、消費電力を低減することが困難であることが課題とされていた。これに対して、第3の素子構造では磁化反転に必要な電流を低減できるとし、実際に重金属チャネル層にTaを、磁化反転層にCoFeBを用いた素子を作製し、磁化反転に必要な電流密度は1011 A/m2台前半であることを実証し、実用上十分に小さな値であることを確認している。加えて、理論計算により磁化反転速度も従来のMRAM素子と比較して10倍高速な1 nsレベルのスイッチングが可能とされており、実用性の高さを示した。また、スピン軌道トルク磁化反転による新たな磁気メモリ素子構造が明らかになったことで、従来の2構造を評価するだけでは解明が困難であった物理が明らかになる可能性も示唆している。

(埼玉大学 柿崎浩一)

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