123.01

分野:
磁気記録
タイトル:
ノンローカルスピンバルブ素子の出力を大幅に向上させる磁性3端子構造の提案
出典:
INTERMAG2015, Session CA03, “ Tri-magnetic terminals based non-local-spin-valves with high output”, (Invited) H. Iwasaki, S. Shirotori, M. Takagishi, S. Hashimoto, and Y. Kamiguchi, Corporate R&D Center, Toshiba Corp. 144401 (2015).
概要
東芝の岩崎らは、5月に北京で行われたINTERMAG2015の将来再生ヘッドシンポジウム(CA-03)にて、ノンローカルスピンバルブ素子(NLSV)の出力を大幅に向上させる新しい素子構造の提案を行った。具体的には、フリー層出力端子の片側電極を、ダブルピン層スピン注入端子の一方と共通化した磁性3端子間構成することにより、従来のローカルスピンバルブと同レベルの出力が実現可能としている。この研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)、戦略的省エネルギー技術革新プログラムにより推進されている。
本文
NLSVは、平面型SV構造による狭ギャップ化、スピン流利用によるフリー層電圧検出端子での発熱抑制の観点から、HDDの再生ヘッド応用が期待されている。しかし、NLSVは、従来ローカルタイプのCPP-GMR構成に比べて、非磁性細線を拡散するスピン流のフリップにより出力が大幅に低下する。東芝の岩崎らは、従来のNLSV構造では出力をフリー層磁性層と非磁性端子との間で検出するため、非磁性端子でのスピン拡散による出力低下が避けられないことを指摘して、それを改善する新しい構造を提案した。具体的には、従来、フリー層の非磁性出力端子を、反平行配列させた2つのピン層スピン注入端子の片方と共通化する。すべての端子は、2つのピン層、フリー層の磁性3端子となり、非磁性細線はピン層と磁性のブリッジのみに限定できる。これにより、上記のスピン拡散起因の出力低下を大きく抑制できるとしている。さらに、スピン注入端子面積を電圧検出端子面積よりも一桁程度大きくすることで、ローカルに匹敵するスピン流密度を電圧端子にて確保できることが示された。これらの構造を盛り込んだFEMによる3Dシミュレーションから、出力を計算した結果が報告され、従来のNLSVに対して約3.7倍の出力が得られるとの結果が示された。さらに高出力を得るために、スピン抵抗マッチングの観点から磁性端子界面に低面抵抗のNOL(nano-oxide-layer)を形成する構造が紹介された。このNOLを含む磁性電極が高スピン分極を示す基礎実験結果が紹介され、この材料によるNLSV特性の大幅な向上が期待できるとの見解が示された。本技術は、狭ギャップ、狭トラック幅再生に適した新型再生ヘッドとして、今後が期待される。

(東芝 鴻井克彦)

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