72.01

分野:
磁気記録
タイトル:
熱アシスト磁気記録可能なFePtナノ粒子媒体構造を実現
出典:
独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)プレスリリース 2010年8月2日(月)
「熱アシスト磁気記録可能なFePtナノ粒子媒体構造を実現」
http://www.nims.go.jp/news/press/2010/08/p201008020.html
 
 
概要:
鉄-白金規則合金のナノ粒子を均一なサイズで分散させた高保磁力(37 kOe)垂直磁化膜の作製に成功した。このナノ粒子分散垂直磁化膜を用いて熱アシスト磁気記録方式により記録試験を行い、面記録密度420 Gbit/平方インチを達成した。同記録方式によるハードディスクドライブの記録容量向上の見通しが示された。。
 
本文:

 ハードディスクドライブ(HDD)の小型化や消費電力の低減のためにはHDDの面記録密度を高めることが必須である。これまで現行の垂直磁気記録方式の改良によって面記録密度の向上が図られてきたが、現行方式では1 Tbit/平方インチ程度が限界と考えられている。この面記録密度を4 Tbit/平方インチにまで高めるためには新しい磁気記録方式への移行が必要で、熱アシスト磁気記録方式はそのための有望な記録方式の一つとされてきた。

熱アシスト磁気記録方式に用いる磁気記録膜には、(1)再生信号品質を高めるために数ナノメータの均一なサイズの磁石粒子が稠密に分散した微細構造を有すること、(2)記録情報を長期間保持するためにナノサイズの粒子でも磁化が熱で反転しない結晶磁気異方性の高い磁性材料を用いること、(3)ナノサイズの粒子の磁化容易軸を膜面垂直に配列させること、等が求められる。独立行政法人物質・材料研究機構磁性材料センターの宝野和博センター長、高橋有紀子主幹研究員、Zhang Li博士研究員はこれらの特性を兼ね備えた高保磁力(37 kOe)垂直磁化膜をL10型の規則構造を有する鉄-白金合金を用いて作製することに成功した。

この高保磁力鉄-白金規則合金ナノ粒子分散垂直磁化膜を用いて、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST) サンホセ研究センターのBarry C. Stipe博士らが熱アシスト磁気記録ヘッドによる記録試験を行い、現行のハードディスクドライブ(HDD)で使われている垂直磁気記録方式の記録密度を超える420 Gbit/平方インチの熱アシスト記録が達成可能であることを示した。これらの成果により、熱アシスト磁気記録方式に適合する媒体の実用化への道筋が示された。

なお、本研究の成果は8月16-18日にサンディエゴで開催される第21回磁気記録国際会議(TMRC2010)において発表された。

 

(日立中研 根本広明)

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