69.05

分野:
磁気応用
タイトル:
第9回強磁場応用専門研究会
出典:
“Perpendicular magnetic anisotropy in Co/Pt multilayers studied from a view point of anisotropy of magnetic Compton profiles,” M. Ota, M. Itou, Y. Sakura, iA. Koizumi and H. Sakurai, Applied Physics Letters, 2010年4月12日オンライン版
参考ホームページ:
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2010/100412
概要:
 2010/2/23東京大学弥生講堂アネックスにて開催、参加者は25名であった。磁場は非接触で物質に対して力学的な作用を与えることができる。また、強磁場を利用すれば、反磁性物質や常磁性物質に対しても重力と同程度の大きさで磁気力を作用させることができる。このため強磁場を種々の物質の組織制御手段として用いる研究が盛んに行なわれている。今回の強磁場応用専門研究会では「磁場配向」をテーマに、磁場配向による材料創製、磁場配向過程の実験的・理論的理解に向けた取り組みをこのフィールドで活躍する先生方にご講演頂き、大変活発な議論が交わされた。
本文:
  1. 「中性子回折による磁場配向過程解析と X線回折による磁場誘起多段階格子変形の観測」寺田典樹 (物材機構)
    中性子回折測定を利用したスラリー中のセラミックス粒子の磁場配向挙動や配向体の焼結効果の解明について紹介された。中性子を利用するとその高い透過性により静磁場下におけるアルミナ粒子の磁場配向挙動が in-situ で観測できる。新たな実験事実として、アルミナの場合10 Tでは配向度が不十分であること、ボルツマン分布を考慮した配向分布の式からスラリー中でのアルミナ粒子の完全配向には20 T程度の磁場が必要となること、が明らかとなったことなどについて紹介された。

  2. 「メソポーラス薄膜中のメソ細孔の磁場配向」山内悠輔 (物材機構)
    静磁場を利用したメソポーラス物質の組織制御に関する研究について紹介された。メソポーラスシリカ薄膜はシリカ源であるTEOS(テトラエトキシシラン)を含む前駆溶液を基板にキャスト・乾燥させたのち焼成を行うことで得られる。磁場印加は乾燥の過程で行なわれる。界面活性剤の種類・サイズがメソチャネルの磁場配向組織に与える影響、基板面に対する磁場印加方向の違いによる組織の違いなどについて磁化率の異方性や他の競合エネルギーとの比較に基づいた議論が行なわれた。

  3. 「磁場印加された磁気異方性粒子の配向挙動」岩井一彦 (名大)
    磁場配向のうち特に回転磁場を用いた結晶配向挙動について理論および実験の両面から検証した事例が紹介された。回転磁場は磁化困難軸を配向させる技術であり、磁場回転面に対し垂直方向にこの軸が向くことを利用する。磁化困難軸配向状態の時間変化は、結晶と磁場の回転速度が同期しながら配向する同期モードと、同期しない非同期モードに分かれ、非同期モードの場合、同一の回転速度では印加磁場の増加とともに配向時間が長時間化することが理論的・実験的に示され、興味を引いた。

(物材機構 廣田憲之)

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