33.03
- 分野:
- 磁気物理
- タイトル:
- Fe, Co, Niの高圧下での電子状態と磁性
- 出典:
- Applied Physics Letters 90, 42505 (2007)
- 概要:
- 3d遷移金属の高圧下のK吸収端XMCD測定から、Feの磁気モーメントは18GPa以上でbccからhcpに転移するのにともない消えるが、Co、Niでは100Gpa以上でも強磁性がよく残っていることを報告した。また、Coは150GPa以上で、Niは250Gpa以上で磁性成分が消えていくと予測している。これらの変化は圧力により3d価電子帯が広がることに起因すると示唆している。
- 本文:
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Fe, Co, Niはよく知られた3d遷移金属であり電子状態についても古くから多くの研究が行われている。圧力下ではポテンシャルエネルギーに対して電子の運動エネルギーが増加しクーロン相互作用の重要性が小さくなるので、十分な高圧下ではFe, Co, Niは電子相関のない金属なると言われている。Feの高圧下の電子状態、磁気状態の研究はメスバゥワー及びX線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism: XMCD)の実験で23GPaまでは報告があったが、Co, Niではなかった。Iotaらは(Applied Physics Letters 90, 042505 (2007))は、100Gpaまでの高圧X線吸収測定(X-ray Absorption Near Edge Spectroscopy: XANES)およびMCD測定を3d遷移金属のK吸収端でダイアモンドアンビルセルを用いて行い3kOe磁場中のFe, Co, Niの高圧下の電子状態、磁気状態を報告した。XMCDの測定からFeの磁気モーメントはbccからhcpになった23Gpa以上では消え、Co, Niでは70GPa, 100GPaでも残っていることが明らかになった。DFT計算から、相転移のない状態では磁気モーメントは圧力に対して単調に減少することを明らかにした。また、XANESのスペクトル解析から3d-4p電子の混成を見積もり、圧力は波動関数が重なり合いフェルミ面近傍に3dバンドが広がるのを促進することを明らかにした。さらに、彼らはCoでは150GPa以上で、Niでは250GPa以上で相転移に伴う非磁性相の出現を予測している。
(日本原子力研究開発機構 安居院あかね)