8.03
8.03:(第18回日本放射光学会年会より)
硬X線による走査型XMCD顕微鏡
2005年1月7-9日、佐賀県鳥栖で第18回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムが開催された。
JASRI/SPring-8の高垣らは、μmオーダーの空間分解能を有するX線磁気円二色性(XMCD)測定を、高輝度放射光におけるマイクロビーム集光技術と移相子による偏光制御技術を組み合わせることによって実現し、硬X線による走査型XMCD顕微鏡を開発したと発表した(8P127:SPring-8 BL39XUにおける走査型XMCD顕微鏡の開発)。
この装置はエネルギー領域5~16keVでの利用を想定しており、遷移金属のK吸収端や希土類金属のL端などを選択的に励起することで、微小領域における元素別磁化測定、試料中の磁化分布の元素別イメージングを可能とする。硬X線の侵入長は長いので、例えばMRAMなど測定対象となる磁気記録層が保護層の下にあるような場合でも、試料表面下の磁化分布を得ることができる。講演では、CoCrPtディスクの磁気記録パターンの観測例が紹介されていた。また、外部磁場の印加や、温度制御のアクセサリも将来的には整備可能とのことであり、試料中に磁気元素が空間的に分布するような媒体・素子などの磁性材料評価の手段として大きく期待される。
(JAERI 安居院あかね )