8.02

8.02:(第9回ナノバイオ磁気工学専門研究会報告)

磁性微粒子の新たな応用

  2004年11月30日に、東工大大岡山キャンパスにおいて第9回ナノバイオ磁気工学専門研究会が参加者33名を得て開催された。今回の研究会では、磁性微粒子の環境汚染物質除去への応用と、磁性ビーズを用いた細胞の回転分子モーターの研究に関する講演が行われた。
最初の講演は、「超伝導磁気分離技術と磁性微粒子を用いた環境汚染物質の除去」という題目で金沢工大の小原健司氏により行われ、磁性微粒子と超伝導磁石を用いた磁気分離技術を、地熱水に含まれているヒ素のような環境汚染物質除去への応用の紹介であった。
  高温超伝導磁石と磁性微粒子を用いたシステムで、地熱発電所地熱水のヒ素浄化に成功したという。このシステムは、5m/分の高速通水速度を有し、3ppm以上のヒ素濃度を環境省排出基準の0.1ppm以下に低減できることに加えて、二次廃棄物を生じない、省エネルギー、いかなる場所へも設置可能という特長を持っているとのことであった。
  2番目の講演は、「磁性ビーズを用いた細胞の回転分子モーターに関する研究」という題目で東大の野地博行氏により行われ、生体内でタンパク質合成・分解に機能している回転分子モーターに関する研究の報告であった。取り上げられた話題は、強制逆回転に伴う逆化学反応の検出、および不活性状態のF1モーターの力学的活性化であった。F1モーターは、化学反応エネルギーを利用して回転する直径・高さともに10nmの生体分子モーターである。磁性ビーズを同モーターに付着させ、外部磁場により同モーターを制御し、また、1分子を入れる1fL容積の実験チャンバーなど、ユニークな実験系の紹介がなされた。
  両講演とも、磁性微粒子の更なる応用例を示した、エキサイティングなものであった。

(東工大 阿部正紀、理研 野田紘憙 )

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