4.05:JEMS’04

タイトル:
希薄強磁性半導体AlN:Cr およびGaN:Cr
本文:
  9月5日~10日の6日間、Joint European Magnetic Symposia(JEMS’04)がドイツのドレスデンで開催された。この会議は、European Conference on Magnetic Materials and Applications(EMMA)とMagnetic Recording Materials Conference(MRM)が合体してから2回目の会議に当たる。3日目のMagnetism and Spin Injection in SemiconductorsのSymposiumで、アリゾナ州立大学のグループから、900Kを越えるキュリー温度をもつ希薄強磁性半導体AlN:CrおよびGaN:Crに関する詳細な実験結果が報告された。
  AlN:CrおよびGaN:Cr薄膜は、基板に6H-SiCを用い、反応性MBE法によりそれぞれ700ºCおよび825ºCで作製され、最適なCrの濃度はそれぞれ7%および3%であった。いずれの薄膜も磁化の温度変化から、Cr原子あたり0.6μB(at 10 K)の磁気モーメントをもち、900 Kを越えるキュリー温度をもつ強磁性体であることを示した。また、高分解能TEMから、膜はともにエピタキシャル成長しており、XRDおよびEELSから、GaN:Crには、わずかに反強磁性体のCrNが存在したが、AlN:Crは単相であった。さらに、RBSからCrの大部分はGa(Al)を置換していることを確認した。これらの実験結果から、AlN:CrおよびGaN:Cr薄膜の強磁性は不純物や異相によるものではなく、本質的な強磁性であると結論している。
  なお、この会議では、ZnOやアナターゼ型TiO2に遷移元素を置換した薄膜でも室温を越えるキュリー温度をもつ強磁性体であることを示す発表が数多くあった。J.D.Coey(Trinity College)は、Closing sessionで、これら酸化物や窒化物における強磁性は本質的なもので、これまでにない新しい強磁性のメカニズムが存在するであろうと述べている。

(東邦大 品川 公成)

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