4.01
4.01:ICF9
EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)を用いたフェライトの微細構造解析
米国サンフランシスコにおいて第9回国際フェライト会議(ICF9、2004年8月22日~27日)が開催された。Plenary SessionにおけるNortheastern UniversityのV. G. Harrisの講演をはじめ、EXAFSを用いたフェライトの微細構造解析に関する報告が多く行われていた。
X. Zuo, A. Yang, C. Vittoria, V. G. HarrisのグループはPLD法を用いて作製したMnフェライト薄膜の原子配置をコントロールすることを試みた。Mnイオンがスピネルの四面体位置と八面体位置をどの程度の割合で占めているかを確認するためにEXAFSを利用していた。
彼らはフェライト薄膜の高周波応用を考えており、そのためには高い一軸性の異方性磁界と大きな飽和磁化を有することが必要不可欠であるとした。そこで、ターゲットにMnOとFe2O3を用いた改良型PLD法により、MnO/Fe2O3の膜厚を0.5nmとし、それを積層することで500~800nmのMnフェライト薄膜を700ºCの基板温度で作製した。これにより、膜の応力と原子配置がコントロール可能であると報告した。さらに、成膜条件を種々検討し、基板に{100}MgOを用い、Mn:Fe=2:5、酸素ガス圧1mTorrのときに2.4kOeの非常に大きな異方性磁界を示すMnフェライトが得られ、比較的大きな飽和磁化値も得られた。この薄膜についてEXAFSによる微細構造解析を行った結果、通常のバルクでは80%が正スピネルとされるのに対し、かなり高い割合でMnイオンは逆スピネルの位置に入っており、これにより大ききな一軸性の異方性磁界が発現したと結論付けた。
フェライトのように原子配置によってその磁気特性が大きく変化する材料においては、その構造を解析することにより、さらなる高性能化を目指す指針を得ることができる。また、元素置換によって磁気特性を改善することの多いフェライトにおいて、その置換サイトの特定も物性の解析には重要な意味を持つと考えられる。そのような意味でEXAFSは今後、有用な解析手法として注目される。
(埼玉大 柿崎 浩一)