第239回研究会/第46回光機能磁性デバイス・材料専門研究会報告

「光による磁気物性計測と光計測技術の最前線」

日時:2022年11月22日(火)13:30~17:00
場所:オンライン開催(Zoom)
参加者:26名

 近年,光の計測技術の進展と共に磁性体の評価技術もめざましい進展を遂げている.特に,時間分解法を用いた計測技術やイメージング技術は,スピンのダイナミクスを調べる方法としてスピントロニクスの研究に必要不可欠の技術になっている.新しい光計測技術の導入により新たな磁気物性計測技術の進展も期待される.本研究会では,光計測技術の研究を行っている3人の研究者と,光と磁気物性に関する研究を行っている2人の研究者に,最近の研究成果をご講演いただいた.専門分野の垣根を超えた質疑応答と議論が活発に行われた.

  1. 「偏光カメラを用いた偏光イメージング」
    ○大谷幸利(宇都宮大)

     偏光に関する基礎からストークスパラメータやミュラー行列を用いた偏光の記述方法や,その測定方法について解説がなされた.さらに,定量的な偏光画像をワンショットで計測できる偏光カメラの原理および高速測定などの応用例が報告された.

  2. 「液晶幾何学位相回折素子を用いた偏光走査型偏光撮像」
    ○小野浩司,坂本盛嗣(長岡技科大)

     講演者らによって提案された幾何学位相回折素子による100%の効率での円偏光分離機能を組み込んだ偏光撮像と偏光照明からなる偏光走査型偏光撮像(PPPI)装置について解説がなされた.PPPI装置は物体の偏光作用を表す全ミュラー行列要素を決定できることから広範な実用展開が期待されることが説明された.

  3. 「ピコ秒前後で変化する光電界の解析」
    ○塩田達俊(埼玉大)

     一度しか生じない複雑な超高速光波形の計測法について紹介がなされた.特に,周波数領域軸上での光電界スペクトルの相関を利用した新規波形計測法を中心に,動作原理,理論シミュレーションや実験によるピコ秒時間の光波形計測の検討結果が報告された.

  4. 「光のヘリシティが誘起する強磁性体/重金属薄膜の磁化ダイナミクス」
    ○飯浜賢志(東北大)

     円偏光パルスによって誘起される強磁性体/重金属薄膜における磁化ダイナミクスの研究結果が報告された.逆ファラデー効果や,光スピン注入効果,光誘起ラシュバ‐エーデルシュタイン効果によるスピントルクの寄与を,詳細な解析によって分離して議論できることが示された.

  5. 「反強磁性体の超高速磁化ダイナミクス測定」
    ○佐藤琢哉(東工大)

     反強磁性体はテラヘルツ領域において有望な機能をもつ.本講演では,六方晶YMnO3の反強磁性ベクトルについて,コヒーレントスピン歳差運動による変調を線形・非線形磁気光学効果の時間分解計測にて評価した結果について紹介された.

文責:石橋隆幸(長岡技科大),田辺賢士(豊田工大)

前の記事

第238回研究会報告
研究会

次の記事

第242回研究会