第230回研究会/第4回磁気センサ専門研究会

高度スマートグリッドシステム実現のための磁気センサ技術

日 時:
2020年12月22日 (火) 13:00 ~ 16:15

場 所:
オンライン開催
参加者:
35名

 温室効果ガスの大幅な削減を実現するために,無駄な消費電力を徹底的に削減する必要がある.そのためには,電力の流れを供給・需要の両側から制御して最適化する,スマートグリッドシステムが必要不可欠である.究極的なパワーマネジメントを実現するためには,電力または電流を精密に計測可能なセンサが必要である.本研究では,極めて精度の高い電力・電流計測を可能にする磁気センサ技術の進展について,4名の講師に講演いただいた.オンライン開催になったものの,30名を超える研究者・技術者が参加し,活発な議論がなされた.

  1. 「電力監視センサ開発の現状と展望」
    ○辻本浩章(大阪市大)

     磁性薄膜機能素子を利用した電力監視センサと,その計測原理に関する講演がなされた.従来の電力計に比較して,小型軽量・安価・低消費電力・広周波数対応の特長を有しており,次世代のIoT電力センサとして期待が大きい.また,開発した磁性薄膜デバイスの事業化も進められており,2015年に設立された株式会社SIRCの取り組みについても紹介がなされた.

  2. 「コアレス電流センサの開発」
    ○竹中一馬(横河電機)

     狭い空間にある導体内の電流を測定するための,小型コアレス電流センサの開発の現状について講演がなされた.磁気コアの機能を補完するための導体位置を推定するアルゴリズム,および,バックグラウンド磁場をキャンセルするための磁気シールド技術について報告された.今後,スマートグリッド応用のみならず,電気自動車の開発工程における電流計測にも応用が期待される.

  3. 「大電流を高精度に測定可能なTMR磁気センサの開発」
    ○中野貴文(東北大)

     トンネル磁気抵抗(TMR)効果を利用したTMR磁気センサを,広ダイナミックレンジ,かつ,高精度の電流センサに応用する取り組みについて報告がなされた.磁化反転磁場の大きな垂直磁化膜を利用することにより広ダイナミックレンジが実現され,高次の磁気異方性の小さい磁性材料を利用することで出力の非線形性を低減できることが明らかになった.今後,スマートグリッド用の電流センサとして有望な候補の一つとなりえる.

  4. 「磁気光学効果を利用した電流センサの開発」
    ○曽根原 誠(信州大)

     金属磁性薄膜のファラデー効果を利用した,光プローブ型電流センサの開発に関して報告がなされた.金属磁性材料,および,磁気ヨークの開発によりセンサ感度の向上が実現された.また,企業等との共同研究により飛躍的な小型化が進んでいることも紹介された.今後,環境に存在する電磁雑音や環境温度変化に強い,利便性の高い電流センサとして応用されることが期待される.

  5. 文責:大兼幹彦(東北大)