第180回研究会報告

「メタマテリアルからみた光と磁気」

日時:2011年10月21日(金) 10:30 – 16:30
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:48名

波長よりも十分小さな構成要素からなるマクロな人工物質・材料は「メタマテリアル」と呼ばれる。メタマテリアルを用いると、波の振る舞いを自然界には無い方法で制御できる。例えば、電磁波に対する電磁メタマテリアルでは、マイクロ波領域で負の屈折率や隠れ蓑などが実現され、近年注目を集めている。本研究会では、メタマテリアルでの光や磁気について最前線で研究されている方々に講演をしていただき、議論を行うことで、メタマテリアルが持つ可能性について考えた。当日は非会員17名、学生6名を含む合計48名の参加者を集め、活発な議論が行われた。以下に各講師の方々の講演の概要を記す。

講演内容:

  1. 「非相反右手/左手系複合メタマテリアル」
    上田哲也(京都工繊大)

    非相反移相メタマテリアルについて解説があった。この人工構造体は、順方向伝搬において正屈折率を示すのに対して、逆方向伝搬に対しては負屈折率を示す特徴がある。等価回路モデルを用いた構成方法が明示され、興味深い非相反波動現象の物理的意味について論じられた。

  2. 「時間・空間反転対称性の破れたメタマテリアルの物理」
    澤田桂(理研)

    光と磁気との関わりを糸口として、メタマテリアル中の光の状態について議論された。特に、時間反転対称性と空間反転対称性の一方もしくは両方の破れた系に着目し、対称性の破れと光学応答の関係が考察された。

  3. 「磁性ナノ粒子系におけるスピン波の制御とギルバート減衰定数の変化」
    三俣千春(東北大)

    磁性メタマテリアルにおける透磁率制御の手段として、コンポジット膜中の磁性ナノ粒子の配列とギルバート減衰定数の関係についての研究結果が報告された。双極子磁場の大きさと分布の組み合わせで、共鳴状態における帯磁率の大きさが変化することが紹介された。

  4. 「光波メタマテリアル構成要素としてのプラズモンナノ共振器」
    宮崎英樹(物材機構)

    電場増強、熱放射増強、熱アシスト磁気記録の観点から注目されてきた金属/誘電体/金属構造を持つナノサイズのプラズモン共振器が、大きな磁場増強効果も有しており、光波メタマテリアルの構成要素として有望であることが紹介された。

  5. 「スピントロニクスにおけるモノポール」
    多々良源(首都大)

    スピンポンピングと逆スピンホール効果を組み合わせた現象が微視的に解析され、この現象が、スピン流が電流に変換されているという従来の見方よりは、むしろモノポール生成とアンペール則による電流生成としてきれいに解釈できることが明らかにされた。。

  6. 「テラヘルツメタマテリアル」
    宮丸文章(信州大)

    テラヘルツ波の周波数領域におけるメタマテリアル材料開発の現状が概説されたうえ、特に一般的に用いられているレンズ硝材のようなバルクメタマテリアル材料を目指した、三次元メタマテリアルの研究・開発について紹介があった。

  7. 「共鳴体のネットワークとしてのメタマテリアル」
    田丸博晴(東大)

    メタマテリアルの特異な光学応答の設計論を考えるにあたり、電磁場の共鳴や電子系の共鳴など、共鳴とみなせるものをより積極的に同一視し、それらのネットワークとして考えることが提案された。

(文責: 冨田知志(奈良先端大))